シンシンミシン:近所のカフェで発見した珍しいミシン

ミシンの思い出とエピソード
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この記事では、私が近所のカフェで発見した珍しいミシン「シンシンミシン」についてお話しています。

場所は大阪市都島区高倉町1丁目の「トヨクニコーヒー」。

現存する最古のRC集合住宅の一角で営業されています。

カフェ日記としてはこちらなどに複数にわたり書いているのでご参照ください。

シンシンミシンの部分だけをこちらに移してまとめ直しました。

カフェ店内は戦後(とくに1970年代頃)の玩具や置物などが多く、所狭しと並べられています。レコードやファミコン、それにミシンもあります。

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シンシンミシンとの出会い:2018年9月17日

トヨクニコーヒーのシンシンミシン。テーブルの上にレトロな雑貨がたくさん。

妻とミシンを見ていると「SINSINミシンだって!SINGERじゃない!初めて見た!」と驚きました。

私も2度目に観たくらいで、国産ミシンとは思いつつ今まで調べたことがありませんでした。店の方曰く今も現役とのことです。

このシンシンミシン(シンシン・ミシン)、かつて米国シンガー社が梅田の大丸百貨店と合同ブランドとして製造販売したミシンだそうです。

解説書をみると「大阪.大丸百貨店推奨販売 シンシンミシン」と書いてあります。

販売店はなんと「西澤ミシン商会 磯城郡桜井町北口」で、これまた実家近所の地名があったのでびっくり。桜井町が磯城郡から独立して市制施行となったのが1956年9月ですから、このシンシンミシンはそれ以前に販売されていたことになります。

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ミシンとの新たな出会い:2018年10月30日

ふと妻が店内の雑誌に気づきました。

なんと杉野芳子の「ドレスメーキング」。

誌名と創設校名「ドレスメーカー女学院」が被るので、当時の洋裁派閥を想像させます。

文化式一辺倒になってしまった昨今の貧相な洋裁文化を打開してくれる楽しみが出ます。
コーヒーやスマホを片手に夢中で当時の状況を探りました。

妻が一番衝撃を受けたのが杉野芳子監修「ドレスメーキング スタイルと洋裁」1953年6月号(通算27号)に載っていた「着る人」。

モデルマネキンという言葉は1950年代半ばには一般的に使われていなかったことが分かります。またファッション関連の職業のうちモデルは今ほど重視されていないことも分かります。

この写真のモデルは丸茂美子。

この頃の「ドレスメーキング」でよく「着る人」として登場しています。衣服設計する人はデザイン、撮影する人はカメラ、着て写される人は着る人。このチグハグさがファッションの面白味。何の統一感もありません(笑)。

裏表紙は何とブラザー社の広告。

「今年のモードをつくる!」と宣言して「オートマチック ジグザグミシン」が載っています。ボディをみるに、これは家庭用ミシンではなく職業用ミシンかと思われます。

この「ドレスメーキング」という雑誌はアパレル業者向けのものではなく、あくまでも女性消費者向けのものでしょうから、工業用ミシンでもなさそうです。

とはいえ、昔になればなるほど家庭用ミシンは重厚になるので、次のミシンが家庭用か職業用か区別できません…。

先のブラザー・ミシンも…私の自信は怪しくなってきました…。

別の号には三菱ミシンの広告もありました。

妻が「三菱もミシンを作ってたの?」と尋ねて少しテンションが上がります。戦前からブラザー、蛇の目に並んで日系ミシン・メーカーとして頭角を現していたのが三菱ミシンです。

同社は1942年に東京陸軍被服廠(本廠)から軍需用ミシンの製造販売を一手に委託されますが、重工業に比重を置きたい三菱電機は、これをキャンセル。代わりに引き受けたのがブラザー社でした。

そのノリで、今日もやはりこのシンシン・ミシン(SINSIN)を写さない訳にはいきません。

ミシンだけでなく、キューピー人形にテレビにと昭和を丸ごと盛り込んだ店内は中々インパクトがあります。

ミシン談義が高じました。

シンシン・ミシンは今日も健在:2019年2月10日

今日は畳の方で。

11時半くらいに行ったので客がいなくてのんびりできました。

気になるシンシン・ミシンは今日も元気に立っていました。

今日も居座るシンシンミシン。バックミュージック次第で一気に小津の世界へ飛びそうな雰囲気。

今日も居座るシンシンミシン。バックミュージック次第で一気に小津の世界へ飛びそうな雰囲気。

いつも通りレトロ感が満載。

バックミュージック次第では一気に小津安二郎の世界へ飛ぶ勢いです。

トヨクニコーヒーにて。2019年2月10日撮影。

トヨクニコーヒーにて。2019年2月10日撮影。

洋裁雑誌をパラパラと : ミシン広告に萌える

シンシン・ミシンをみて安心して、次は洋裁雑誌の撮影です。

「最新アメリカ式図解洋裁全書」という大層な題名の本と定番の「ドレスメーキング」。

洋裁雑誌。「最新アメリカ式図解洋裁全書」という大層な題名の本と定番の「ドレスメーキング」。トヨクニコーヒーにて。

洋裁雑誌。「最新アメリカ式図解洋裁全書」という大層な題名の本と定番の「ドレスメーキング」。2019年20月10日トヨクニコーヒーにて。

今日はどのミシンと出会えるか楽しみに雑誌をパラパラめくりました。

まずは三菱電機の三菱ミシン。

ミシン針も売っていることが下に書かれています。

折り返しで隠れていますが「・職業・工業」という文字が見えるので、きっとその左は「家庭」かと。

この女性はメジャーを首に掛けていて、まさに裁縫仕事の一休みの雰囲気、カッコいいです。

三菱ミシンの広告(「ドレスメーキング」1953年、通算24号より)

三菱ミシンの広告(「ドレスメーキング」1953年、通算24号より)

次いでブラザーミシン(ブラザー社)の広告です。

撮影に夢中でちゃんと文字を読んでいませんでしたが、起こすと「1953年の新春を迎えて、あな(たと共に)幸多き日を!」かと。

ブラザーミシンの広告(「ドレスメーキング」1953年、通算24号より)

ブラザーミシンの広告(「ドレスメーキング」1953年、通算24号より)

「御購入はお近くの信用ある特約店及著名百貨店にて――」。

奥に見えるミシンは先の三菱と同じく、とても可愛いといえるものではありません、職業用ミシンかと思います。

今日、この2社のミシン広告と出会えたのは不思議。

1944年頃の話ですが、日本帝国東京陸軍被服廠は三菱ミシン社へ軍需用ミシンを発注したところ、拒否されます。おそらく三菱は本領の電機事業に集中したかったのでしょう。

代わりに請け負ったのがブラザー・ミシン社でした。ブラザーは被服廠から踏み倒されるのを避けて、製造費用の前納という交換条件を同廠に飲ませたのが上手いところです。

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