子供にミシンが必要な理由

青田充弘『501XXは誰が作ったのか?』の感想

青田充弘氏の書いた『501XXは誰が作ったのか?―語られなかったリーバイス・ヒストリー』の表紙。関連情報
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この本はリーバイスの歴史を述べた本です。著者の言葉ではインダストリアル・ヒストリー(工業製品史/264頁)。

本書は、リーバイ社の個人史と会社史を中心に、背景となるアメリカ史はもちろん、ミシンやボタンなどの関連メーカーにも言及し、広く深いでき栄えになっています。

感想

執筆期間に驚き

まず、半年で書かれたという点に驚きました。

2017年、編集の方から声をかけられました。ジーンズに関する文字中心の本。期限は約半年。

出典 青田充弘『501XXは誰が作ったのか?―語られなかったリーバイス・ヒストリー』立東舎、2018年、264頁

資料収集方法に驚き

次いで、資料収集にも驚きました。

リーバイ社から資料提供を受けずに、自身や知人の独自ルートで集めたもの。

縁故で資料を集めると偏りそうなものですが、リーバイ社の歴史をアメリカ史において丁寧に述べている点がすごいです。

最近思うのですが、中国やヨーロッパやアメリカのように外国に影響を与えられる地域を取りあげた場合、日本のようにカオスにならず、筋の通った本を描きやすいのかもしれません。

資料収集が偏っていようとも大局は存在するので、それほどズレた話にならないのでしょう。

アメリカ史とブレイクスル

アメリカ史を勉強するとブレイクスルできる

中国やヨーロッパやアメリカが大局的だという点に関わり、アメリカ史を勉強するとブレイクスルできる気がします。

私は2000年頃からアパレルとミシンの歴史を勉強してきて、1980年代に聞いたことのある会社リーバイ社を知りました。同社デニムを1980年代や1990年代に私は穿いたことがなかったと思いますが、名前と世界一という先入観だけはもっていました。

アメリカという大局の点でも、リーバイ社という会社の知名度の点でも、本書もまた、一つのアメリカの標準的な企業発展や文化発展を示せたと思います。

同じ著者として感じたのは、こちらが戦前日本のミシン輸入を勉強してきて、アメリカという大局に対して日本はカオスだということです。

次の写真は、2019年4月6日に写したリーバイスのジーンズ「502 TM」です。

リーバイス502ジーンズとロゴです。

リーヴァイ・ストライスウス・アンド・シーオー(Levi Strauss & Co. Original Riveted)502TM。

リーヴァイ・ストラウス・アンド・シーオー(リーバイ・ストラウス社)、サンフランシスコ・カリフォルニア。オリジナル・リベテッドのクオリティ衣料品。

パテント(特許)は1873年5月20日に取得されたと記されています。このパテントはこちらで確認できます。

リーバイ社の社史は姉妹サイトで簡単にまとめているのでご参照ください。

参考 リーバイスの歴史:501シリーズで有名なアメリカジーンズの老舗

日本を対象にすると大切なものを見失う

これまで研究会で報告しても「ミシンの国産化を論じなさい」と注意する先生がしばしばいましたが、閉口です。国産にこだわることが研究で大切なのでしょうか?

歴史や経済は国境を越えます。そういう学問をしてきて何で国産なのか、また何が国産なのか、そもそも意味が分かりません。

実際に、戦後日本のミシンメーカーの広告をみていると、先述の先生方のアドバイスが全く嘘だということを痛感します。

たとえば、ドイツの某社ミシンも取り扱っているとか、アメリカの某社ミシンの販売代理店をしているとか…。おいおい、国産ミシンメーカーが外国ミシンメーカーの固有名詞を使って安心と信頼を求めていただけではありませんか。

アメリカを対象とした点に少し焼餅

これに対して著者は、リーバイ社そのものを焦点にあてています。

本書は、世界を代表する会社の一つを対象に、アメリカという大局をもつ地域も対象としているので、ブレイクスル(一点突破全面展開)を描けたともいえます。

この点が、日本を対象にすると幹が出ないこととコントラストとなって、少し焼餅の気持ちになりました。

ミシンメーカーとの関わりからみるリーバイ社

本社とミシンとの関係は2か所で触れられています。

1点目は第2章、シンガー社やクローバー・アンド・ベーカリーのところ。

2点目は第4章、リーバイ社がユニオン・スペシャル社のミシンも導入しはじめたというところ。
ユニオン・スペシャル社は特殊ミシンを軸にミシン多様化を促進したメーカーです。19世紀末の創業以来、世界中で使われました。

日本が長らく先入観に囚われてきたアメリカミシン史は、普通ミシンのシンガー社と特殊ミシンのユニオン・スペシャル社という風に二分して理解する点です。

もちろん、多少の得意不得意の傾向はありますが、自著で説明したように、20世紀前半のミシン国際競争のなかで取扱製品を多様にする必要から、普通対特殊という二分法は通用しなくなってきます。シンガー社もどんどん特殊ミシンを製造販売し、ユニオン・スペシャル社もどんどん普通ミシンを製造販売していきました。

もとい、本書は、19世紀後半世界のミシンをリードしたシンガー社と、20世紀前半世界のミシンをリードしたユニオン・スペシャル社に触れていることに加え、1915年のパナマ太平洋博覧会で、リーバイ社、ユニオン・スペシャル社、そしてボタンメーカーのユニバーサルボタン社の3社共同で展示ブースを設けたと伝えます(「両者」というのはUS社とUB社だと理解しました)。

想像は掻き立てられます。おそらく、リーバイ社は普通ミシンも特殊ミシンもシンガーミシンをベースにしながら、20世紀に入ってからは特殊ミシンを中心にユニオン・スペシャル社のミシンを積極的に導入していったはずです。間違いなくリーバイ社の工場には両社のミシンが共存したはずです。

岡山県倉敷市のジーンズメーカー「ベティ・スミス」のジーンズ博物館には両社のミシンを使っていたことを示すミシン本体が数種類展示されています。

以上、対立でしか考えられない日本の研究者たちの軽薄な発想とは違って、本書は開放感を与えてくれるものでした。

私もいずれブレイクスルしたいと思いました。

青田充弘氏の書いた『501XXは誰が作ったのか?―語られなかったリーバイス・ヒストリー』の表紙。

青田充弘『501XXは誰が作ったのか?―語られなかったリーバイス・ヒストリー』立東舎、2018年

書籍 青田充弘『501XXは誰が作ったのか?―語られなかったリーバイス・ヒストリー』立東舎、2018年

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