ロングテール : シンガー社製ミシンの製品構成からみて
色んなミシンを製品種別にみると不思議な現象ロングテール(The Long Tail/つまり長尾)を見つけることができます。
ロングテールとは企業が商品販売を行なう際に次のような両方法を用いるのが無難だという説です。
- 少ない種類のメジャー商品をたくさん売る
- 多い種類のマイナー商品を少しずつ売る
この記事では、2000年代半ばに注目されたクリス・アンダーソンのロングテール現象をシンガー社製ミシンの製品構成から2点で確認します。
背景 : シンガー社の生産予定台数の変化
上の折れ線グラフは「シンガー社の生産予定台数の特徴」で、横軸に年、縦軸に台数をとりました。
折れ線は3種あり、実線が全生産予定台数、点線が台数の多い上位10機種、さらに細かい点線が同じく上衣5機種です。
年によって予定台数が目まぐるしく変わっていますが、1930年頃の世界恐慌までは最低100万台最高で350万台を予定していました。第2次大戦でかなり減少し、戦後は最高でも150万台と低調に入ります。戦後に日本のミシン・メーカーが輸出力を高めたのは、このようにシンガー社の減退が背景にありました。
以下ではシンガー社が世界的に敵なしの状態となった最初の時期、1900年だけに絞って製品構成をみていきます。
シンガー・ミシンのメジャー製品にみるロング・テール
次の図は、1900年にシンガー社が生産すると予定したの製品構成です。
横軸に機種、縦軸に予定台数をとりました。年間254,000台を予定された28k型から順に、生産予定台数の多い機種順でグラフを作っています。
台数降順に並べたグラフですので、右下がりになるのは当然です。
この図だけでもロング・テールを確認できます。機種44k辺りで既に数値が分かりにくくなっています。
シンガー・ミシンのマイナー製品にみるロング・テール
クリス・アンダーソンの指摘するようにマイナー製品だけを取り上げて大きくしてみると、次の図になります。
機種27-4から最小の機種43までを取りあげました。前のグラフでは台数が小さすぎて分かりにくなったのですが、このようにマイナー製品だけに焦点を当てると、またまた長尾が出現します。
少数の機種だけを取り上げても、1つ目のグラフと形のあまり変わらない右下がりのグラフが出現します。
ここでもロング・テールを確認できます。クリス・アンダーソンの言葉ではテール内テール(Tails within Tails)です。
この2枚目のグラフのように、生産台数や販売点数が少ない場合でも、機種の種類や販売品種が多ければ、それらの総和も販売戦略の一つとして重視すべきだというのがクリス・アンダーソンのロング・テールの理論になります。
結論
クリス・アンダーソンのいう理論または現象はオンライン書店のAmazonを事例にしたものでした。
ここで強調したいのは、ロング・テールがAmazonに始まったものではなく、120年前のミシン製造販売の計画に既に盛り込まれていたということです。
ちょっと悔しいのは、お見せした2つのロングテールのグラフがアンダーソンの示すような綺麗な曲線にはならないということです。まぁ、彼は100万点近い製品種をグラフ化したので、仕方ありません…。