日本のミシン国産化年表:ミシンメーカーの展開と輸入動向

開発・特許・競争
この記事は約7分で読めます。
記事内に広告を含みます。
スポンサーリンク

この記事では日本のミシン国産化年表を紹介しています。

ブラザーミシン、ジャノメミシン、三菱ミシンなどの日本ミシンメーカーの展開や国産ミシンの台頭を中心に、ミシン製作やミシン改良の歴史を分かりやすくまとめています。

また、ミシン輸入や外国企業動向も少し交えています。

依拠した文献やウェブサイトは最下部に明示します。

このページの元原稿はこちらから書誌情報をご覧ください。
スポンサーリンク
スポンサーリンク

日本のミシン国産化年表:ミシンメーカーの展開と輸入動向

1868年

ドイツ人アープリヒ、ドイツ製環縫ミシンを輸入し横浜で陳列販売。

1871年

左口鉄蔵、ドイツから靴ミシンを輸入・組立開始し、後にドイツ製環縫ミシンの試作販売開始。

今井又三郎、環縫単線ミシンを製作。

1872年

朝田商店、ドイツ本国からドイツ商館(横浜・築地)流入のミシンを仕入販売開始。

1874年

この頃、軍服・警察服・教員服向けに二重台の巨大な横引ミシン・蝶貝ミシン利用、裁断に1/4割出法導入。

1877年

今井又三郎、環縫単線ミシンを第1回内国勧業博覧会へ出品。

1880年

シンガー社、神戸・大阪の商店を通じ金台の手廻式ミシンを販売するが失敗。

1881年

左口鉄蔵、第2回内国勧業博覧会へ綾縫環縫ミシンを出品。

1887年

ミシン取付型電動機製作(89年説あり)。

1891年

内田嘉一、和服縫ミシン発明で最初の特許取得〔特許第1111号〕。

1895年

辻本福松、足袋用爪先縫ミシンを製作(後に特許取得)。※ただし、「戦前期ミシン関連産業財産権の調査方法:J-PlatPatの活用」では確認できない。

1900年

米国シンガー社日本進出、ドイツのナウマン社等と競争関係に。

1901年

陸軍被服廠、軍靴製作工場設立。

1902年

日本製靴株式会社創立。

1904年

陸軍被服廠、ミシンの電動運転開始。

1906年

松三曙、シンガー社製ミシン第44種13型を用い、足袋縫製に初の動力利用(後、つちや足袋も)。

1908年

〔ブラザー系〕安井兼吉、安井ミシン商会を創業し、ドイツ製環縫ミシンの改良販売、修理・部品生産開始。

シンガー社製ミシン、ホワイト社製ミシン等の輸入が盛大に。

1910年

野口卯之助、部品製作開始。

この頃、米国等でクラッチ電動機を家用ミシンに導入。

1911年

小出新次郎、小出式裁縫ミシンを考案〔特許第20982号〕。

1912年

木村亀吉・花岡市太郎、紀州ネル加工に動力ミシンを利用。

1913年

この頃より二重環縫ミシン(オーバーロック・ミシン)の輸入増加。

1914年

関根安治、大正博覧会にシンガー第15種30型の類似品を出品(刺繍機能を追加)。

甘利忠俊、ころもミシンを製作〔特許第27049号〕。

独国製をはじめ欧州製ミシン、輸入途絶。

1915年

武藤鍬三郎、家庭用ミシン部品製作を開始。

中島寅蔵、工業用ミシン部品製作を開始。

1916年

小野亀次郎、針の試作。

1920年

明嵐豊次(次郎)、明嵐式和服用裁縫ミシンを製作〔特許第31751号〕他3点。

1921年

〔蛇の目系〕亀松茂・小瀬與作・飛松謹一ら、パインミシン裁縫機械製作所を創業(日本最初の本格的工場生産)。

1923年

輸入中古ミシン、逐次輸入。

1924年

〔蛇の目系〕本縫ミシン「パイン」製作開始。

飛松謹一、ローラースミシン創立。

黒川恍洋、コントロールミシン創立。

1925年

矢幡健吾、小型のリード・ミシン製作開始。

〔ブラザー系〕安井ミシン兄弟商会へ改称。

1927年

〔ブラザー系〕麦稈帽子製造用環縫ミシンを製作(翌年に販売)。

1929年

〔蛇の目系〕パイン100種30型(シンガー社第15種と同型)完成。

シンガー社の特許権消滅。

1930年

黒川侊洋、「コントロール・ミシン」の商標登録・市販。

〔三菱系〕三菱電機、ミシン製作開始。

1931年

〔蛇の目系〕国産パインミシン株式会社へ改称、メリヤス用24~26環縫ミシンを考案。

関税大幅引き上げによるシンガー社製ミシンの価格高騰。

この頃、シンガー社の特許権が消滅し、これと同一の部分品生産が可能に。

1932年

〔ブラザー系〕安井正義、シンガー社第15種の製作に成功。

シンガー社販売店、大規模争議(~翌年2月)。

中島延好・矢幡健吾、リード・ミシン製作開始。

1933年

福助足袋、エンパイア・ミシン(シンガー社第15種)を完成。

〔ブラザー系〕家庭用ミシンの製造販売。

1934年

〔ブラザー系〕日本ミシン製造株式会社へ改称。

1935年

〔三菱系〕独自設計によるミシン製作・販売〔特許第100865号〕。

〔蛇の目系〕帝国ミシン製造株式会社設立。

1936年

中島延好・矢幡健吾、リード・ミシン(高速度ちとせ号)を英米へ輸出。

〔蛇の目系〕小金井工場設立(のちブラウン・アンド・シャープ社製万能フライス盤、ジップ社製ジグボール盤等を導入)。

1937年

ミシン製造工業組合創立(11月東京、12月大阪)。

〔三菱系〕資金調整法認可(11月)。

美馬ミシン商会、二重環縫ミシン(オーバーロック・ミシン)の国産1号完成。

外国製ミシン(中古ミシン含)、輸入途絶。※激減しますが、厳密には途絶は1941年末あたりから。

1938年

〔三菱系〕電気銅使用の少ない電機応用品(ミシン・工作機械等)の受注強化。

〔蛇の目系〕資金調整法認可(10月)。

シンガー社、日本国内の月賦販売停止。

1939年

〔ブラザー系〕陸軍被服廠管理工場に。

1940年

ミシン公定価格決定。

〔ブラザー系〕この頃、三菱が辞退した陸軍被服廠の命令により、シンガー社製第99種100型(鳩目の穴縢ミシン、モーター式)を製作・納品。

1941年

2月末頃、陸軍被服本廠、シンガー社から第99種130型、第24種33型、第71種101型、第11種16型を合計35台分輸入。

1942年

日本ミシン製造工業組合設立(企業整備)。

1943年

〔蛇の目系〕海軍より、帝国ミシン株式会社経営権を沖電気へ譲渡の命令。

1941年施行の「鉄製品製造制限規則」へ「普通本縫ミシン」追加。

スポンサーリンク

参考文献・参考ウェブサイト

  • 日本ミシン産業史編纂委員会編『日本ミシン産業史』(日本ミシン協会、1961年)
  • 蛇の目ミシン社史編纂委員会編『蛇の目ミシン創業五十年史』(蛇の目ミシン工業株式会社、1971年)
  • 工業ミシン産業史編集委員会編『日本工業ミシン産業史―日本工業ミシン協会の歩み―』(日本工業ミシン協会、1984年)
  • 角田直一『児島機業と児島商人』児島青年会議所,1975年,79~82頁。
  • 中川安行編『鉄鋼統制法規類集』鉄鋼統制資料2、産業情勢研究会、1942年、16・17頁。
  • 大阪通商産業局編『ミシン工業(附全国ミシン業者名簿)』ミシン月報社、1951年、39頁
  • 沿革 | 工業用ミシンのペガサスミシン製造株式会社
  • 三菱電機株式会社社史編纂室『 三菱電機社史―創立60周年―』三菱電機株式会社、1982年、51頁
  • 「特許情報プラットフォーム|J-PlatPat」内「特許発明明細書」文献番号「特明1111」「特明20982」「特明27049」「特明31751」「特明100865」格1頁。
  • 下園聰『怒濤を越えて―国産ミシンの父・山本東作の生涯―』(日本ミシン工業、1960 年、201・202頁)。
  • 東京商工会議所『中小工業の経営実態調査の概要―合板工業、ミシン工業―』(調査資料, 第187号)1959年、58頁。
  • JACAR(アジア歴史資料センター),Ref. C14010096600,「輸入証明書綴(8)」(防衛省防衛研究所),9~13コマ。
  • ダイヤモンド社編『無言の信念―ブラザー工業社長安井正義―』ダイヤモンド社、1965年、46~50頁、61頁、67頁。
  • 銀行信託協会通信部『資金調整法認可許可実例―改正資金調整標準表掲載―』1938年、34・35頁。

コメント 感想や質問をお寄せください♪

タイトルとURLをコピーしました