日本のミシン輸入動向と普及経路 : 第1部 第5章
この記事では『ミシンと衣服の経済史』に関するご質問のうち、第1部第5章「日本のミシン輸入動向と普及経路」についてお答えしています。
授業で質問して頂いた学生方々も含め、これまでご質問を寄せて頂いた方々に感謝いたします。
統一感を持たせるために文章の一部を変更し、簡潔な見出しをつけています。質問のはじめに♣、回答のはじめに♥をつけて区別します。
国産ミシンと輸入ミシンとの違い
♣158頁に国産ミシンを取り上げてますが、軽くしか書かれてないのでこれまでの輸入品との違いを詳しく聞きたいです。
♥違いは本書で調べる余裕がなかったので、刊行後に下の論文で書きました。
簡単に「USAの真似してミシンを作りたい」が、「工業所有権に関するパリ条約」が引っ掛かって模造品の製造販売が不可でした。その工業所有権(うち特許)2種の有効期限が切れた1930年頃に、ようやく国産化が始まりました。
1900年頃に男性がミシン技術を学んだ機関は?
♣136頁8行目。裁断は男性作業と書いてありますが、当時男性がミシン技術を学ぶ機関があったのでしょうか。それとも工場で付け焼き刃で覚えたのでしょうか。
♥当時の男性がミシンを学ぶ機関は、徴兵されて陸軍被服廠に配属されるか、テーラーに丁稚奉公・通勤するか、それくらいです。
おおむね被服廠に勤務していたケースが多かったでしょう。第2部になりますが、182頁に掲げた表2「陸軍被服廠の職工数推移」をみると、日露戦争を起点に女工数が男工数を上回ります。理由は180頁・181頁をご覧ください。
ドイツ製ミシンがシンガー社製ミシンより安かった理由は?
♣138頁。ドイツ製の方がシンガー社製よりも安いのはなぜですか?
♥あまり知りませんが138頁下から5行目、ドイツ製の国際競争力が低下したのが一因でしょう。米国製が売れていく中でドイツ製の価格は高めです。
日本のミシン輸入がドイツ製からアメリカ製へ移行した理由は?
♣138頁。ドイツ製ミシンはアメリカ製ミシンよりも安価だったにもかかわらず、アメリカ製ミシンに移行したのは何故ですか。
♥140頁下から2段落目。ドイツ製ミシンは重く、重量課税を日本が導入して価格が上昇しました。そして、シンガー社ミシンの故障に対応できる修理業が日本で進展しました。シンガー社のミシンは故障しやすいが縫製速度はドイツ製よりも速かったそうです。
ロシアとイギリスからの衣料品の注文が1915年に増加した理由
♣152頁。ロシアとイギリスの注文が1915年に増加した理由は何ですか。
♥イギリスからの対日注文が増加したのは第1次大戦が原因です。
ロシアは不詳ですが、多分、今までヨーロッパから輸入していたのに、第1次大戦で輸入不可となったので、日本に転換したのでしょう。
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