未経験者と旅するミシン歴史博物館

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ミシンの世紀は、ミシン未経験者の私(しんしん)がミシンのグローバルな広がりに魅了され、これまで調べたことをまとめたミシン歴史博物館です。昔のミシンあれこれ、ミシンを使った方々の思い出をまとめています。ミシンメーカーの歴史やアンティークミシンをお楽しみください。
ミシンの使い方や民族衣装の服づくりでは私(れいれい)も少しお手伝いしています。
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私にとってミシンとは

ふだん私自身はミシンを使ったことがありません。

1980年頃、小学生の時に家庭科の授業で、たまに使っただけです。

あの頃は、服づくり(縫いもの)は女性の仕事という風潮が消えはじめ、男女問わず服は買うものとなりはじめた頃です。それでも風潮の少しは残っていたので「女性ってこんな怖い機械を使うのか」とビビっていました。

今でも妻がミシンを使うたびに、なぜか恐縮するというか、萎縮するというか、不思議な気分になります。手元には針とボビンケースと糸がマッハで動いてるんですよ、怖いですやん。いや、飛んでいるというべきでしょうか…。

その割に完成品は可愛い服や雑貨というギャップ。

あぁ、ミシン怖い。

そんな運営者ですが、ミシンをつうじて皆さんと一緒に時間と空間を旅したいと思います。

カフェで見つけたシンガー・ミシン。台北市九份にて2011年10月29日撮影。©sewingmachine.mobi

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未経験者と旅するミシン歴史博物館「ミシンの世紀」

サイトの課題1:ミシンの歴史や特徴を丁寧に解説する

ミシンの世紀はミシンの歴史や特徴を丁寧に解説しています。

これがサイトの課題の1つ目です。

アメリカのシンガーミシンの歴史をはじめ、日本のジューキミシン、ジャノメミシン、ブラザーミシンなどの歴史も紹介しています。

そして、ミシンをとおして世界史や世界経済を楽しく学ぶことを目的に運営しています。

サイトの課題2:ファッションとミシンのバランスをとる

ミシンの世紀は2018年12月5日に開設しました。

姉妹サイトにファッションの世界史をテーマにした「モードの世紀」をもっています。

どんな勉強にも当てはまりますが、アパレルやファッションばかりを勉強し続けるとたまに吸収力も思考力も止まります。

ミシンの世紀を開設した理由の一つに「モードの世紀」に疲れたことが挙げられます。

ファッションとミシンのバランスをとりたいと思った次第です。これがサイトの2つ目の課題です。

サイトの課題3:ミシンから世界の歴史や世界の経済をつたえる

ふだん私は大学で経済史や日本経済史の授業を教えています。

日本経済がすっかり減退して回復の見込みがないなか、何をどう教えれば良いのかに悩みます。

それでファッションやミシンを取り上げることが増えてきました。

ミシンから世界の歴史や世界の経済をつたえる。これがサイトの3つ目の課題です。

ミシンを使う人は減っています。

老若男女を問わず、ミシンの思い出や情報をいろんな方と共有できれば幸いです。

とくに次のミシンメーカーはエピソードや思い出をよく送っていただきます。

アンティークミシンの関係から「昔の洋裁雑誌とレトロな広告」もとりあげています。こちらもあわせてご覧ください。

ミシンとは

ミシンはアパレル生産やファッション文化につよい影響を与えた縫製用の機械です。

ミシンは数十年前の日本では多くの家や工場にありました。

ミシンは服を縫うだけではありません。

本を縫い、穀物などの入った袋口を縫い、今では内臓の手術に使われホルモンの傷まで縫います。このサイトではミシンの色んな姿を伝え、ミシンに労わってもらった分、ミシンを労わりたいと思います。

縫合器の一種。エンドGIA™ トライステープル™ エンドGIA™ ウルトラ ユニバーサルステープラー縫合器関連 | 製品カテゴリ | ステープラー関連 | 外科系手術関連 | 製品情報(製品カテゴリ) | 医療関係者の皆様へ | コヴィディエン

カテゴリー「ミシンの不思議」にミシンの特徴とエピソードをまとめています。

ミシンの不思議や謎に迫ります。

ミシンの被った誤解

ミシンの誤解リスト会話風

ミシンはイギリス産業革命に登場せずアメリカが作った玩具だ!
玩具じゃないですよ。あなたより、動きは良いです。
有名ブランドの服はミシンを使わず手で縫っている!
ちゃんと見ましたか? ミシンを使うと楽になる部分があります。全部手で縫ってたら世界中にブランド店を出せませんよ。
シンガー社は一貫生産したけど、日本のミシンメーカーは部品企業の社会的分業基盤に強みをもった!
シンガー社も分業でしたよ。あなた、日本的幻想です。
戦後日本のミシン業界はアセンブリ方式を導入したり組合化を進めたりして、シンガー社を国内市場からかなり締めだしたぜ。上陸阻止したんだぜ!
えーと。ブラザーの取扱店・特約店などは戦後に自社製品を売る一方で、シンガー社をはじめ外国製ミシンの取扱店でもあるという広告をバンバン出していますよ。こちらを見なさい。それと、1社相手に全国規模でムキになって虐めるのは如何?1社で戦ったシンガー社の方が断然カッコいい。

とかくミシンは誤解を受けやすい可哀そうなヤツです。

繊維機械ではないミシン?

かなり固いですが、次の文章を読んでやってください。

縫製機械たるミシンは普通繊維機械に含めない
丸山泰男・中村雄一・岡部彰・妹尾明「産業機械工業の発展と構造」有沢広巳編『機械工業2』1960年、153頁

とのように、識者によってはミシンを繊維機械とは認識しない場合もありました。「普通」って何なんでしょうね。そこで止まるのではなく、そこから始めるのが学問なのに…。

ミシンって、鉄や酸素でも縫ってるかのようなハミゴ状態。

こんな本はポイッ!

日本経済史という偏向的な部門はミシンを軽率にあつかってきました。

これに対して、西洋経済史は正直にミシンとアパレル産業の展開を記録しています。

この点を次の記事に詳しく書いています。

ミシンと洋服

古いものから新しいものへ変わるステージにおいて、古い作り方や財が必ず一新されるわけではありません。

もちろん、新しい財が登場した時、新しい別の財を作ろうという動きも出ます。たとえば幕末開港期にミシンを使って洋服を作るというものです。

しかし、和服はミシンが輸入されるにつれ、ミシンの対象となっていきました。

また、ミシンの影響で普及したといわれる洋服は、1850年代に輸入が始まっています。アメリカでミシン産業が勃興した直後です。

つまり、ミシンという新しい財が洋服という新しい別の財を生み出したのではありません。または和服という古い財が手縫いという古い技術によって継続されましたが、漸次減っていきました。

まさに「絶妙」にミシンというものが裁縫の技術に浸透していったわけです。

ミシンの世紀では「ミシンカタログ」を公開しています。昔のミシンにはどんな機種や機能があったかを調べたり眺めたりできます。

このカタログではアメリカのミシンメーカー「シンガー社」「ユニオン・スペシャル社」をはじめ、海外のミシンメーカーや、「ジャノメ社」「ブラザー社」「ジューキ社」など日本のミシンメーカーのミシンをいろいろ紹介しています。

機種からミシンの歴史をたどるのも面白いですよ。

ミシン研究の経緯

「ミシンの世紀」はミシンの歴史や広がりを紹介したサイトです。

大学院に通っていた時期に私はアパレル産業史を調べる傍らでミシンに興味をもち、あれこれと調べているうちに今の妻と結婚をしました。

妻は裁縫が大好きなのでミシンや服のことを色々と聞かせてもらい、調べたこととミックスさせて論文や本にしました。

ミシンと衣服の経済史 初版の表紙。妻が装丁してくれました。

ミシンとアパレル産業を何とか繋いで1冊の本にまとめたのが『ミシンと衣服の経済史』です。この本については出版社のページをご覧ください。

その前後も色んなミシンと色んな出会いがありました。

このサイトではこれまでのミシンとの出会いや別れを記し、みなさんと一緒にミシンのグローバルな旅を楽しんでいければいいなぁと思っています。

ミシンをネタに授業

このサイトはミシンをネタにした大学の授業を反映させています。

講義やゼミではミシンの被ったいろんな誤解を解いています。

シンガーミシン製造工場、ニューヨーク市中央通り、1853年8月。The First Singer Sewing Machine Factory

また、このイラストに描かれたシンガーミシンの製造工場など、ミシンメーカーに関する歴史やトピックももりだくさん話しています。

世界経済史の授業ではイギリス産業革命とアメリカ合衆国への影響に焦点をあてています。

そして、ミシンの開発や企業体の展開が世界のアパレル産業やファッション文化に与えた影響を説明しています。

日本経済史の授業では、19世紀後半から日本が外国製ミシンを輸入し、その結果、20世紀転換期ころにはアパレル産業が急に広範囲へ展開したことを述べています。