オーダーメイドの洋服を作ったブラザーミシン「TA2-B622 Special 3」
この記事では「オーダーメイドの洋服を作ったブラザーミシン「TA2-B622 Special 3」」の思い出を紹介しています。
ミシン所有者とあなたの関係
そのミシンを所有している方はあなたから見てどなたに当たりますか?
高知県に現在も住む今年で81歳になる母方の祖母です。
その方の生年やミシン利用期間の西暦や居住地
祖母は1938年に高知県安芸市川北甲生まれで、高校を卒業した後に高知市の女子専門学校に1956年に入学しました。
その際、このミシンを祖母に購入してもらい、ミシンの技術習得と専門学校卒業後の洋服店での業務などに使用していました。
その後、1972年に祖父と愛媛県松山市吉藤町に移住した際も、家財道具と共に小さく分解して一緒に引っ越しました。
1975年に高知県に再び移住し高知県高知市万々町で、私の叔父に当たる長男が生まれた後、現在も祖母が住む高知県高知市布師田町の実家二階の祖母の部屋にミシンは存在しています。
ミシン本体について
- ミシンのメーカー:ブラザー
- ミシンの機種:TA2-B622 Special 3
- ミシンの購入年:1956年
ミシンの性能
購入当時は電動式のミシンがなかったため、これは人力を動力とする足踏み式の工業用ミシンでした。
また機能も非常に単純で、出来る縫い方は直線縫いのみしかありませんでした。
かがり縫いやまつり縫いなどは出来ませんでしたが、当時仕上げは手で行う事が当たり前だと考えていたそうで、それをとくに不便と感じたことはなかったそうです。
構造もとてもシンプルだったため裏糸表糸の調整をしなくても一直線に縫う事ができ、工業用の油をさすだけで他のメンテナンスは一切必要なく、今まで65年間一度も故障したことがないという点が、非常に気に入っている点だそうです。
ミシン技術の習得先
高知県高知市の女子専門学校で洋裁全般の知識と共にミシンの扱いを学びました。
祖母は住んでいた安芸市から電車で2時間半程度かけて毎日高知市の学校に通っていました。
ミシンに本格的に触れたのはこのときからでしたが、ペダルを踏むだけでまっすぐに縫えたため、難しいことは何もなかったそうです。
ミシンの使い道
このミシンの主な使い道について尋ねました。
「専門学校を出てからは高知市の洋服店に就職して、店に来た人の依頼を受けてオーダーメイドの洋服を作っていたよ。」
「仕事以外では家族の使う枕カバーや布団を作ったり、皆の服の修繕によく使っているよ。今私が着ている服もほぼ全部が自分でこのミシンを使って作った物だよ。」
と言って、その時着ていた縮緬生地のシャツを自慢げに見せてくれました。
祖母が勤めていた洋服店は現在ではすでに閉業してしまっており、祖母も具体的な店名を忘れてしまっていたので調べる事はできませんでしたが、高知県高知市本町にあった、主に洋服の生地を取り扱っている洋服店だったそうです。
仕事をしていた時の具体的な話について聞くと「店に依頼されて私が担当したのはほとんどが婦人服で、とくに多かったのはスカートとジャケットだったよ。店から生地や素材をもらったら大まかな縫合をミシンで直線縫いしてから、手縫いで仕上げをして完成させていたよ。」と言っていました。
いままで作った物で一番難しかった物は何かと私が尋ねると「やっぱり仕事で作った婦人服のオーバー(コート)が作業も多くて複雑で、きっちりとかっこいいシルエットに仕上げるのが一番大変だった。」と言っていました。
出産や祖父の転勤による引っ越しなどもあって、仕事は20年目ほどで辞めたそうで、そこからはミシンの主な使用用途は子供や自分が着る服の作成や修繕の無償労働に完全に切り替わったそうです。
家族のために作った物について私が聞くと「○○(私)や他の兄弟達や従姉妹達の幼稚園で使う防災ずきんやバッグとかはお前のお母さんと一緒に作ったよ。昔は子どもの使う物は全部母親やおばあちゃんが作る物だったから、年が上がって新しい物を作らなきゃ行けなくなったときはお母さんと相談して、その子が好きな柄や生地なんかを考えながら作ったのが楽しかったね」と思い出深く語っていました。
ミシンの現在
写真の撮影とインタビューをしに高知市布師田町の家に行った時も、祖母はミシンで中学生1年生の従兄弟が部活で使っているナップサックの修繕をしていました。
「このミシンは今でもちゃんと現役だよ。60年以上使ってきたけど今まで故障したことは一度も無いし、二回くらいベルトが伸びたのを交換した以外、油を差すだけでしっかり動いてくれるからすごくいいよ。」と言っていました。
「今はおじいちゃんも亡くなってこの家に一人だから、週末以外は高須町の健児(私の叔父)家族が住んでいるマンションにいるけど毎週帰ってきたら皆が使う服や寝具の修繕をしたり、生地を手に入れたら新しい服を作ったりしてよくミシンを使っているよ。」と言っていました。
ミシンへの思い入れ
「専門学校に入学したときに私のおばあちゃんにこのミシンを買ってもらってから、いままで60年以上ずっとこれと一緒に過ごしてきた。私はもうこの先長くないかもしれないけど、このミシンはこれからもずっと使い続けられるから、これは家族の皆にとっては私の形見になるかもね。」と祖母は語っていました。
「お前のお母さんにも小さい頃からこのミシンを使って、ミシンの使い方を教えてきたんだよ。お母さんは覚えが良くて、洋裁の仕事には就かなかったけどミシン使いが上手だったから、結婚したときにこのミシンを引き継ごうとしたんだよ。だけど「おっきくて邪魔になるからいらない。」って断られちゃったことがあるよ。」と祖母は笑いながら話してくれました。
ミシンのこれからについて私が尋ねると「これからも手入れをすればいつまでも使える物だから、私が死んでしまっても孫や家族の誰かに引き継いで、いつまでも大切に使ってあげて欲しい。」と祖母は最後に語ってくれました。
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