「お好きな型を見お選び下さい…:ブラザーミシン」に紹介したキャビネットつきミシンは日本でこそ20世紀後半に作られましたが、本家アメリカでは19世紀末には普及していました。
この記事では1世紀前にアメリカで普及したキャビネットつきミシンを紹介しています。
1世紀前にアメリカで普及したキャビネットつきミシン
シンガー社をはじめとするアメリカのミシンメーカーがキャビネット型を導入しました。
そして、ミシンに家具機能をつけたり、家具そのものとしてミシンを隠せる製品を販売しだしたのは19世紀第3 四半世紀から。
1850年にミシン産業が発展して10~20年後のことです。
この時期の米国ではミシンが女性に対し最高の恩恵をもたらすと思われていましたが、既製服産業の急速な拡大によって、19世紀末には女性へ威信を与えるものではなくなっていました。
婦人雑誌には、頭部または頭部・脚部を隠せる飾り簞笥付き足踏式ミシンの広告が掲載されるようになります。
また、家事裁縫の風景画からはミシン本体が消え、ミシン開発前のように手縫いが描かれるようになりました。
ミシンが雑誌の広告写真や家事風景画に再び登場するのは、1910年代の電動ミシン普及後のことでした。
キャビネットミシンは次のようにしまうことができるものが多いです。
グローバー・アンド・ベーカー社製キャビネットつきミシン
次のイラストは1870年頃に描かれたもので、グローバー・アンド・ベーカー社の家屋用ミシン「第26型」です。
このキャビネットつきミシンには次のような説明が付されています。
銀色メッキのミシンです。エレガントで実質的で耐久性のある桃花心木製か黒色胡桃製のキャビネットつき。 軽快で静かで迅速で、小さな家庭でも軽作業に多く使われています。
合理的な追加費用さえ払えば、追加の彫刻かローズウッドのキャビネットが26型および27型に提供されます。
出典Grober & Baker Sewing Machine Co., “The seams of the leading sewing machines“, New-York, around 1870, p.10.
オプションで、彫刻つきかローズウッド製のキャビネットへ変更ができたことがわかります。
このようなキャビネットつきミシンの登場がアメリカ家庭の部屋の隅に淑やかに置かれた経緯は次の論文に詳しいです。Marguerite Connolly, ‘The Disappearance of the Domestic Sewing Machine, 1890-1925’, “Winterthur Portfolio”, Vol. 34, No. 1 (Spring, 1999) .
レミントン社製キャビネットつきミシン
レミントン社が1870年代前半に出したと思われる広告からイラストを紹介しましょう。
いずれも黒色胡桃製で、カバーの違いによって値段が変わることがわかります。
これらのキャビネットはとても強く作られていて、もっとも喜んで使われています。
出典The Remington family sewing machine, p.13.
ドメスティック社製キャビネットつきミシン
扉を開くとどんな世界があるのでしょうか。
ドメスティック社製キャビネットつきミシンの広告はそれを教えてくれます。
このイラストのキャビネットケースは、ミシンを使うために開いた折り畳み式カバー、引き出し、ロック(オイル仕上げ)を備えています。
カバーを開くと引き出しが出る仕様です。
ホワイト社製キャビネットつきミシン
次の広告はホワイト社のキャビネットつきミシンです。
長文ですが説明を見てみましょう。
ホワイト・ミシンのキャビネットは今日二つの目的を提供しています。家具のがたくさんあり、収納もできます。縫いたい部屋を飾るために、スタイルの洗練されたモデルをご覧ください。ミシンのを収納した時の優雅な家具たち。上部を持ち上げると、これらは有能な縫工になります。
細かい機能でステッチの長さや張力を調整します。前後に縫うメカニズムをもった現代の奇跡を実現します。 膝タイプののレバーによって、縫製速度を正確に制御できます。これらの新しいホワイト・ミシンは、見るだけの美しさではなく、使うことのスリリングをを提供し、多くの革新と機能を備えています。
これらのミシンは、フロックスやドレーパリーやファンシーワークの作成など、縫製の喜びを高め、すべての新しい機能を組み合わせています。
出典WHITE SEWING MACHINE CORP., “A FEW FACTS ABOUT THE WHITE SEWING MACHINE CORPORATION“, Cleveland, Ohio, U.S.A., p.9.
シンガー社製キャビネットつきミシン
次のイラストはシンガー社の3/4キャビネットつきミシン「標準7号スタイル」です。
附属品が羅列されています。可愛い半分の真珠のヘッド、ニッケルのメッキが塗られたバランス・ホイール、3/4サイズのキャビネットケース、5つの引き出し、黒色トリミング、ドロップ・ノブ、光沢のある胡桃のボックスカバー、キャスター付き。
このタイプは当時24ドルしました。
クラウン社製キャビネットつきミシン
最後にクラウン社のキャビネットつきミシン。
何かが違うと思ったら、足踏台が全体を支えていて、キャビネットが浮いています。
バランス悪い…。