この記事では「戦前期ミシン関連産業財産権の調査方法」を紹介しています。
調査結果はこちらです。
戦前期ミシン関連産業財産権の調査方法
戦前期にミシン関連の産業財産権を調査する方法を述べます。
戦前に取得された特許だけでなく、出願された特許も調べることができます。
国立国会図書館ウェブページ内「戦前の日本特許の調べ方」を調査の手掛かりに、そこで案内されている「独立行政法人工業所有権情報・研修館」運営の「特許情報プラットフォーム(J-PlatPat)」を利用します。
特許情報プラットフォーム(J-PlatPat)を活用
ここで特許や実用新案に関する情報を調べることができ、特許発明明細書や登録実用新案明細書などを閲覧することができます。
「戦前の日本特許の調べ方」では次のように記されています。
戦前期については戦前の特許を検索、閲覧することができるのは、「特許・実用新案番号照会」、「特許・実用新案分類検索」の2つのサービス
出典 「戦前の日本特許の調べ方」
この説明には補足が必要です。
「特許情報プラットフォーム(J-PlatPat)」のページ上部にある「特許・実用新案」のプルダウン・メニューには13項目の検索法が記されています。これらのうち戦前期の特許・実用新案を検索できるのは、1「特許・実用新案番号照会」と4「特許・実用新案分類検索」だけです。
特許情報プラットフォームにおける検索の種類
次いで、検索方法を述べます。
特許・実用新案番号が分かっていれば、1「特許・実用新案番号照会」において「特許発明明細書(C)」と「新案明細書(Z)」の別を指定した上で番号を入力し、照会ボタンを押します。
手順の難しいのは、特許や実用新案の番号を知らない場合です。この場合、4「特許・実用新案分類検索」を用いて、ミシンに区分される特許番号または実用新案番号を知る必要があります。
特許・実用新案分類検索の手順
特許や実用新案の番号を知るためには、ミシンが所属する区分番号を知る必要があります。
つまり、ミシンに割り振られた番号を4「特許・実用新案分類検索」にある「テーマ」へ記す必要があります。それには「パテントマップガイダンス」を参照し、「IPC照会」からミシンの区分を知ることが必要です。
といっても、「IPC照会」に付随している「分類」欄に「ミシン」という言葉を入力しても検索できません。
「IPC照会」の横にリンクが設置されている「分類表」を参照してください。この「分類表」には「テーマグループ」と称してテーマごと(2B~5N)にPDFファイルが用意されています。それを参照します。
もし、ミシンがこれらのテーマのいずれに属するかを知らない場合は「全テーマ分のテーマコード表(エクセル:677KB)」をダウンロードまたは閲覧し、このエクセル表で検索します。
すると、ミシンの「テーマコード」には「3B150」が割り当てられていて、このコードは1983年から87年にかけて廃止されたテーマコード「4L011」~「4L018」から統合されたものだと分かります。
このような手順と調査を踏んだうえで、先述の4「特許・実用新案分類検索」に戻り、テーマ欄に「3B150」を入力します。
次に難しいのが検索式です。
これには「全テーマ分のテーマコード表(エクセル:677KB)」に記された「FIカバー範囲」を参照します。ミシンの場合は「D05B1/00-97/12」とあり、検索式に「D05B1/00」を入力します。
以上の作業が終われば照会ボタンを押します。
そうすると、テーマコード「3B150」(つまりミシン)に区分されている情報、つまり特許と実用新案の明細書番号が表示されます。
次いで、検索ボタンを押すことで「ヒット件数」が示され、一覧表示ボタンを押すことで検索結果一覧が表示されます。
表示された一覧には「文献番号」「発行日」(公告の発行日)などが記されています。この内「文献番号」へはリンクが貼られています。
そのリンクをクリックをすることで該当の特許発明明細書または実用新案明細書を表示させることができます。
戦前期ミシン関連産業財産権一覧の作成手順
一覧の作成手順として4点の角度から述べます。
区分漏れに注意
「特許・実用新案分類検索」を用い、テーマコードが3B150内、さらに、4L011~4L018内に区分されているデータを整理します。
先述したとおり、3B150は4L011~4L018を統合したものです。しかし、必ずしもすべてを統合したとは思われない区分漏れがあります。
区分漏れを埋める
区分漏れを埋めるために『実用新案分類総目録』上巻〔1912〕、『続特許発明分類総目録』〔1914〕、『実用新案分類総目録』上巻〔1917〕の3点を利用します。
- 特許局編『実用新案分類総目録』上巻、帝国発明協会、1912年。
- 特許局偏『続特許発明分類総目録』帝国発明協会、1914年。
- 特許局編『実用新案分類総目録』上巻、特許局、1917年。
これら3点の目録は、恐らく戦前期に刊行された特許・実用新案の特許一覧を示す全ての図書だと思います。
これら目録の裁縫関係の区分名は「裁縫機並ニ刺繍機」です。この項目の下位項目に「縫綴機」「裁縫用具」「火熨斗」「型及絲巻」「刺繍機及刺繍」「雑縫綴機」があります。
このうちミシンについては「縫綴機」「雑縫綴機」を見通せばよいです。
敵産処分された特許
太平洋戦争勃発後のいわゆる敵産処分で取り消された特許と実用新案の情報は、それらを網羅した『米英其他敵国所有ノ特許権集録』〔1942〕[19]を用います。
本書の「機械工業の部」のうち、第92類に区分される全明細書を対象に調査します。同書は92類の下位区分を適用していないからです。
したがって、戦前期ミシン関連特許一覧にはアイロン(火熨斗)や定規などの関連品の少し含むことに注意して下さい。
ミシン関連の商標
また「特許情報プラットフォーム(J-PlatPat)」内の「2.商標出願・登録情報」も参照し、「ミシン」「縫機」等の用語を用いて検索した結果を反映させます。
特許や実用新案に比べ商標の出願は少ないです。
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