小規模仕立業者の経営から読み解くファッションの社会経済史

出版社ページの「著者メッセージ」にて自著『近代日本の衣服産業-姫路市藤本仕立店にみる展開-』の面白みを紹介しています。

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『近代日本の衣服産業』著者メッセージ

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拙著『近代日本の衣服産業-姫路市藤本仕立店にみる展開-』を出してくださった思文閣出版のウェブサイトに、400字ほどで著者メッセージを寄稿しました。

本書は戦時期アパレル小規模業者(藤本仕立店)の動向について、製造販売や経理の点から詳しく描きました。

コロナ禍で経営に苦しむ中小企業や自営業の方々の励みになれば幸いです。

『近代日本の衣服産業』著者メッセージ

著者メッセージで私は次のように述べました。

兵庫県姫路市の小規模仕立業者の史料をもとに、約半世紀にわたる経営展開を叙述。生野銀山の鉱業を背景に、姫路市藤本仕立店は19世紀末に仕事着の製造販売から創業しました。
1910年代以降、学校教育の展開や柔道教育の定着に伴ない、販路を拡大していきました。1930年代末から終戦にいたる戦時経済統制の段階では、藤本仕立店は過酷な経営を強いられ、自営業・中小企業の危機に立ち向かうこととなりました。工業組合参加か商業組合参加か、組合継続か企業化かといった経営アイデンティティを問う難題も経済統制は同店に突きつけます。統制関連の法令と藤本仕立店の史料を突き合わせることで、統制の論理(マクロ)と小規模経営の論理(ミクロ)とを結びつけることができました。
さらに、戦時期の商工省と軍部が牽引した複雑な流通経路が地域社会を分断した過程をはじめ、陸軍被服廠に比べ実態が明らかでない海軍衣糧廠の成立から取引関係までを詳細に論じた補論、繊維素材や衣服形態から丁寧にファッション史を見直した補論も含め、政治経済史とファッション史の両論から、近代日本の衣服産業を縦横無尽に描いています。https://www.shibunkaku.co.jp/news/kongetunoosusume/

このメッセージを書いてから、2つ書き足りない点に気づきました。

コロナ禍の中小企業や自営業者へのエール

本書はアジア太平洋戦争期の日本経済の衰退を背景に考えています。

この点は今のコロナ禍における中小企業や自営業の衰退あるいは廃業と似たような状況が見られます。

しかし違う状況もあります。戦時日本経済は日本帝国政府や軍部が非常に強い指導力を示しました。現在の日本国政府は強い指導力がないままで、中小企業や自営業者に対して複雑な対応を朝令暮改のように行なっています。

『近代日本の衣服産業』は、このような国や世界全体の経済停滞、それは戦争の時に生じたり感染症の拡大で生じたりして、非常に広域な地域にわたって、中小企業や自営業者が経営難に陥るかを詳述しています。

現在、コロナ禍で経営に苦しんでいる人たちや、そこから脱却しようとする人たちに、藤本仕立店が戦時期にどのような経営を行なったかをヒントに、今後も事業を継続したり上図に転業したりしてほしいと願っています。

繰り返される地域社会や地域経済の分断

もう一つは、戦時期に行なわれた経済統制が従来の取引関係に大きく左右されてしまい、結果、新しい取引経路や流通経路を開拓できなかった点です。

そのため、戦前期から軍部と関係の深かった地域と関係の薄かった地域によって、戦争経済のもとでの経済発展のあり方が異なりました。

見方を変えれば、戦争が終わってしまった後、戦前期の取引形態や戦時期の取引状況が残った地域と存在しない地域が分断されたまま、高度成長下のもとで競争関係にさらされました。

この競争関係は民間企業や自営業だけでなく、まさに地域を運営する地方自治体にも及んでいる点を見落としてはなりません。

アパレル産業においては戦時に台頭してきた紡績会社の系列化という事態が西日本の中小企業や自営業者を包摂していきます。

もちろん、包摂ですから、それに漏れる事業体も多くあり、地域経済を取り巻く事態は混雑になっていきます。

このように、戦前期・戦時期から高度成長期にかけて、地域経済が発展した所と衰退した所に分かれたわけです。それも、1990年代のバブル経済崩壊をもって、地域経済は全国レベルで衰退に向かいはじめました。

まやかしの地域復興

日本全体で地域経済が衰退し、地域社会が減退している理由の一つに、少子化の影響があります。

私がいいたいのは、経済地域経済を支え発展しようとか、再興しようとかいうことを生半可に考えてはならないということです。20世紀の地域経済において形成された地域社会や人間関係は、21世紀になってほとんどクリアに一掃されました。

この点を百回でも自分に言い聞かせて、もう一度地域経済を考える必要があります。再興であろうと創生であろうと、単語を並べるだけでは地域経済も地域社会も盛り上がりません。

付け焼刃で若年者の移住を推進する程度の地域経済発展プランでは、難しい問題を打開するインパクトはありません。

ミシンを設置してアパレル工場を誘致するという経済発展のあり方は一つの手段として今後も考えられますが、それが果たして地域社会全体を突き動かすようなものとして、再び日本の地域社会に有効なのかどうか改めて考えてみなければなりません。

『近代日本の衣服産業』について

今回ご紹介した出版社ページの『近代日本の衣服産業』著者メッセージURLは次です。

『近代日本の衣服産業』に対する私自身のコメントはこちらです。

藤本仕立店が戦時期に営業を継続し、戦後に廃業した意味は、ウダウダと復興しないまま地域復興を掲げる昨今の風潮を軽やかに乗り越えていきます。

出版社の著書紹介ページは次のとおりです。

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