この記事では、オルガン針(オルガン・ミシン針)を製造販売していた増島針製造所が1958年に出した広告を紹介しています。
出典の広告のなかで、唯一、すべて英語またはアルファベット表記した珍しい広告です。
増島針製造所の名称も出典では「MASUJIMA NEEDLE M’F’G. Co.,Ltd.」と記されています。「増島 オルガン針」と検索するとオルガン針(現役会社)のページが出てきました。これだと思います。
参考 オルガン針株式会社 「一本の針に心を込めて、世界の顧客に手渡そう」
オルガン針ブランド
創業は1920年、蓄音器針の製造から会社ははじまりました(東京市荒川区南千住)。
ミシン針製造機械を完成させ「オルガン」の商標で製造販売開始したのが1939年。戦時下に現本社地の長野県へ疎開し、そのまま存続。
アメリカへミシン針を初輸出したのは1950年。
4年後の1954年にはメリヤス針の製造販売をスタートしています。
1963年に今のオルガン針株式会社へ社名変更。
広告の内容
出典 蓮田重義編『工業用ミシン綜合カタログ』工業ミシン新報社、1958年、4頁(出典の詳細はこちら)
この広告では4点のイラストが並べられています。
オルガンミシン針14番、ボビンケース、ボビン、そして、オルガンを弾く女性。
フレーズ
左上のロゴマークから。
首元から肩まで出したワンピースドレスを着た、ショートヘアの女性がピアノかオルガンを弾いています。このイラストの周りを円状に「オルガン針ミシン用」と文字が囲っています。
となると、この女性はオルガンを弾いているんでしょうか…。楽器には6本ほど調節棒が付いているのでオルガンの気がしてきました…。
キャッチフレーズへ移ります。
世界の高品質、オルガン・ブランド・ミシン針
生産
JIS規格は1384番。
主な製品は
- ミシン針
- ニット機針
- ボビンケース
- ボビン
の4点です。
工業化にまい進する当時の日本の広告らしく、生産力もアピール。
月間800万針を製造し、(ミシン針のみでか?)国内総生産の8割を占めていたそうです。ミシン針では日本でダントツのメーカーだったことが分かります。
輸出でも世界的な評判を得ていて、生産数の20%を輸出に回していました。
会社情報
「MASUJIMA NEEDLE M’F’G. Co.,ltd.」は増島針製造有限会社。先にふれたように今のオルガン針株式会社へ社名を変更したのは1963年ですから、つじつまが合います。
ヘッドオフィス、つまり本社は長野県小県郡塩田町前山1。同町は1970年に上田市へ編入されています。オルガン針の現本社も、当地から移転せずに現在の長野県上田市前山で操業。
外国貿易部門は、東京都台東区車坂町83にありました。
ニードル・リスト(針リスト)
上に紹介した広告の右側(5頁)には工業ミシン新報社調べによるニードルリストが掲載されています。
目が回ってきますが、列挙します。
「使用ミシン」の欄にメーカー名がない場合は、だいたいがシンガー社の機種番号だとお考えください。
オルガン | シンガー | 使用ミシン |
BQ×1 | 108×1 | 114-50 |
CY×1 | 216×1 | 132K1 |
CY×2 | 216×2 | 133K1, 95-10, 95-40 |
DA×1 | 88×1 | 400W |
DA×5 | 88×5 | 241-11 |
DA×9 | 88×9 | 251-11 |
DB×1 | 16×231 | TA1, DB1,DB2, DB3 |
DB×257 | 16×257 | 251-2, 96-47 |
DC×1 | 81×1 | DC, DC3 |
DC×3 | 2本針ロック | 2本針ロック |
DC×5 | 81×5 | DC4, 85-10 |
DC×11 | 81×11 | DC2, 81-9, 81K7 |
DC×13 | 81×13 | 1-50, 81-53 |
DD×1 | 214×1 | DD1 |
DD×2 | 214×2 | DD2, 145K1 |
DD×5 | 214×5 | DD3 |
DE×228 | 16×228 | DE1 |
DF×3 | 130×3 | 72W12 |
DF×5 | 130×5 | 14W4, 19W2, 137W1 |
DF×19 | 130×19 | DF1 |
DG×1 | 23×1 | DG1, 23-30 |
DH×1 | 24×1 | DH1, 24-7, 158-3 |
DI×3 | 29×3 | DI, 22K1 |
DI×4 | 29×4 | 29K4, 32K7 |
DJ×127 | 16×127 | DJ, 44-72 |
DL×1 | 71×1 | DL1, 71-10, 71-30 |
DM×1 | 82×1 | DM1 |
DM×13 | 82×13 | 82-4, 105-1 |
DN×1 | 92×1 | DN1, 92-20, DS1, 146-30 |
DO×5 | 142×5 | DO1, 99W |
DP×1 | 135×1 | DQ1, 108W21, 142W, 150W |
DP×5 | 135×5 | DP1, DP2, 150W, 400W |
DP×23 | 135×23 | 133W103 |
DR×2 | 124×2 | DS2, 159-2 |
OR×4 | 124×4 | 150-1, 157-2(ドイツ環縫) |
DT×1 | ― | DT1 |
DU×1 | ドイツ八方 | DU1 |
DU×2 | ドイツ八方 | DU2(菱針) |
DV×1 | ユニオン121型 | ユニオン腕2本, DV1 |
DV×1s | 62×1 | 62-25 |
DV×43 | 62×43 | 147-1 |
DV×57 | 62×57 | 300W |
DY×1 | 7×1 | 7-1, 11-11 |
DY×2 | 7×2 | 7-1, 11-11(菱針) |
DY×3 | 7×3 | 144Wクラス |
DY×5 | 7×5 | 7-33 |
FL×1a | 561/1 | フラットロック |
FL×2a | 561/2 | フラットロック |
HA×1 | 15×1 | HA1, HA2, HB1, HC1 |
HY×13 | 206×13 | 206K1 |
HZ×1 | ― | (針幹2本、等長のもの)ジグザグ |
HZ×3 | ― | (針幹2本、長短のもの)ジグザグ |
HZ×5 | ― | (針幹3本、等長のもの)ジグザグ |
HZ×7 | ― | (針幹3本、長短のもの)ジグザグ |
LQ×5 | 68×5 | 68-9, 68-14, 68-38, 68-10 |
LW×1T | ルイス29-13 | ルイス16、ルイス17、ルイス30 |
LW×2T | ルイス29-14 | ルイス50、ルイス54、ルイス55、ルイス60 |
LW×3T | U.S.ブランド251 | U.S.ブランド251 |
LW×4T | U.S.ブランド251 | U.S.ブラインドステッチ用 |
MQ×1 | 58×1 | 58-11, 58-14 |
PH×1 | 137×1 | 114W刺繍 |
PO×5 | 46×5 | 46K100, 46K30 |
TB×1 | 16×87 | TD1, TC1, TD1* |
TF×1 | 16×1 | TE1, TF1 |
TF×2 | 17×2 | TE1, TF1(菱針) |
TF×6 | 16×6 | 44-2 |
TF×73 | 16×73 | TG1, 51-10, 16-10, 31-15 |
TI×2 | 128×2 | 12W206 |
TK×3 | 25×3 | 25×56 |
TL×1 | 151×1 | 246クラス |
TQ×3 | 175×3 | 175ボタン付け |
TQ×7 | 175×7 | 175-60 |
TV×1 | 149×1 | 231-7, 410W, 231-25 |
TV×3 | 149×3 | 231-2, 231-6, 231-7, 231-31, 231-34 |
TV×5 | 149×5 | 231-8, 231-35 |
TV×7 | 149×7 | 253-2, 253-201 |
YM×1 | 150×1 | 242クラス |
出典 蓮田重義編『工業用ミシン綜合カタログ』工業ミシン新報社、1958年、5頁
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