時代が変わればシュールも変わる

ミシン・カタログ(砂田版・蓮田版・松下版)の紹介

松下良一編『'74縫製機器総合カタログ』松下工業、1974年 ミシン型番別カタログ
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この記事が属するカテゴリー「ミシン型番別カタログ」は、ミシン・カタログから昔のミシンをたくさん紹介しています。

サブカテゴリーでメーカー別に小分けしています。

このカテゴリを作るのに用いたミシン・カタログは次のとおりです。

  1. 砂田亀男編『特殊ミシンカタログ全集』1936年
  2. 蓮田重義編『工業用ミシン綜合カタログ』工業ミシン新報社、1958年
  3. 松下良一編『’74縫製機器総合カタログ』松下工業、1974年

これらのうち1点目と2点目は、著者も出版社も不詳の状態です。3点目も含め、かなり貴重なカタログです。

以下ではこれら3点のカタログを紹介します。

砂田亀男カタログ

砂田亀男編『特殊ミシンカタログ全集』1936年

砂田亀男編『特殊ミシンカタログ全集』1936年

このサイトでごく一部のミシンは次の文献も参照しています。

このカタログは、戦前の日本で使われていたミシンの主なものをイラストと簡単な説明で紹介したものです。

約9割の紙面をシンガー社、残りがユニオン・スペシャル社とメロー社で占めています。

文献 砂田亀男編『特殊ミシンカタログ全集』1936年

蓮田重義カタログ

蓮田重義編『工業用ミシン綜合カタログ』工業ミシン新報社、1958年

蓮田重義編『工業用ミシン綜合カタログ』工業ミシン新報社、1958年

刊行目的と完成経緯

戦前来の工業用ミシン、とりわけ特殊ミシンとよばれた機種の輸入は1950年代にも多数に及んでいました。ミシンの種類は3000種に及びました。

こんなに多種が巷に出回っていれば、アパレル業者はどのミシンを使えばよいのか分かりません。

編者の跋をみると次のような具合です。

街頭,ミシンの看板を掲げる業者の多くはその片鱗をも知らざるべく,之が取扱業者と云えどもようやく特的機種を知るにとゞまる

蓮田重義編『工業用ミシン綜合カタログ』工業ミシン新報社、1958年

このような不便を打開するために編まれたのがこのカタログです。

編者は1955年から種々のミシン会社の製品カタログを蒐集しはじめ、1年半の時間を費やしました。機種説明の記述や翻訳依頼も行ない相当な日数がかかったそうです。

種々のカタログ蒐集から本書刊行まで、実に3年間にわたる編集作業が行なわれたことになります。それでも3000種のミシンをカバーすることは難しかったようです。

日本のミシン産業は戦後画期的発展を遂げ,輸出産業のホープとして連年軽機械の首位を占め,国際市場に牢固たる地位を確保する現状にあるが,これは殆んど家庭用ミシンに限られ,広汎多岐にわたる工業用ミシン,特に特殊ミシンと称する機種に到つては厖大なる資本力を擁する欧米の特定メーカーに遺憾ながら追尾し難く,必然的にこれが恣意的とも云える生産に依存する外なく,今日三千種類にも及ぶと云われるミシンを悉く渉猟するは全く指南の事に属し,其の普及活用の途もとより完璧たり得ない。

蓮田重義編『工業用ミシン綜合カタログ』工業ミシン新報社、1958年

内容

カタログは、表紙、序、跋、索引、カタログ部分(本文)、広告部分、奥付の順序に編まれています。

カタログ部分は424ページ、広告部分は57ページにのぼります。カタログ全体で約500ページの分量。

米国シンガー社を筆頭にアメリカやドイツのミシン会社が並びます。

項目はミシン図・寸法・用途・性能・付属品が記されています。

外国ミシン会社のミシン一覧と各分量

カタログ部分は索引として一覧化されています。下表の終了頁に「―」とあるのは1ページのみ割当てられた会社です。

アルファベット表記日本語表記開始頁終了頁
Singer Sewing Machineシンガー ソーイング マシン1151
Union Special Machineユニオン スペシャル マシン152206
Merrow Sewing Machineメロー ソーイング マシン207215
Lewis Blind Stitch Machineルイス ブラインド ステッチ マシン216226
U. S. Blind Stitch Machineユー・エス ブラインド ステッチ マシン227229
WillCox & Gibbs Sewing Machineウイルコックスアンドギブス マシン230233
Columbia Blind Stitch Machineコロンビア ブラインド ステッチ マシン234236
Chandler Sewing Machineチャンドラー ソーイング マシン237
Reece Buttonhole Machineリース 釦穴かがり マシン238
American Blind Stitch Machineアメリカン ブラインド ステッチ マシン239
Adamson Sewing Machineアダムソン ソーイング マシン240
Bellow Sewing Machineベロー ソーイング マシン241243
Strobel Special Sewing Machineストロベル スペシャル ソーイング マシン244249
Mauser Special Sewing Machineモーゼル スペシャル ソーイング マシン250256
Schubert Sewing Machineシューベルト ソーイング マシン257
Marco Embroidery Machineマルコ 刺繍用 マシン258259
Zangs Embroidery Machineツアングス 刺繍用 マシン260
Circle Sewing Machineサークル ソーイング マシン261
Albin Porkert Sewing Machineアルビン ポーカート ソーイング マシン262
Adler Sewing Machineアドラー ソーイング マシン263302
Durkopp Sewing Machineダルコップ ソーイング マシン303321
Pfaff Sewing Machineパフ ソーイング マシン322376
Lintz Embroidery Machineリンツ 刺繍用 マシン377382
Cornely Embroidery Machineコーネリー 刺繍用 マシン383386
Shoe Machine靴 用 マシン387403
Universal Attaching Machineユニバーサル アタッチング マシン404
Electric Cloth Cutting Machine電気絨布裁断機405406
Attachment (Pinking, Piping etc)アタッチメント─ピンキング パイピング等407
Bellow Pressing Machineベロー プレス マシン408
Hoffman Pressing Machineホフマン プレス マシン409412
Needle Spacificationミシン針規格表413424

このカタログ総ページ数の8割強を占める部分は外国メーカーです。

上表を細かく見ますと、まず、ミシンは「靴用マシン」(Shoe Machine)までで403ページを占め、主にアメリカ系企業とドイツ系企業で構成されています。

404ページ以降はリベットの圧着機、裁断機、折り目をつけるプレス機等が集められています。最後の「ミシン針規格表」(Needle Spacification)のみに日本製らしきものが含まれます。

登載27社

表16にあるミシン会社は27社。

簡単に社名だけ拾うと、シンガー(Singer)、ユニオン・スペシャル(Union Special)、メロー(Merrow)、ルイス(Lewis)、ユー・エス(U. S.)、ウイルコックスアンドギブス(WillCox & Gibbs)、コロンビア(Columbia)、チャンドラー(Chandler)、リース(Reece)、アメリカン(American)、アダムソン(Adamson)、ベロー(Bellow)、ストロベル(Strobel)、モーゼル(Mauser)、シューベルト(Schubert)、マルコ(Marco)、ツアングス(Zangs)、サークル(Circle)、アルビン・ポーカート(Albin Porkert)、アドラー(Adler)、ダルコップ(Durkopp)、パァフ(Pfaff)、リンツ(Lintz)、コーネリー(Cornely)、ユニバーサル(Universal)、ベロー(Bellow)、ホフマン(Hoffman)。

主力会社

このうち、シンガー社には151ページが割り当てられ、カタログ全体の3分の1弱を占めています。

ページ数の多い企業に、ユニオン・スペシャル・マシン(Union Special Machine)と、パフソーイングマシン(Pfaff Sewing Machine)が55ページ。アドラー・ソーイング・マシン(Adler Sewing Machine)の40ページ。上記4社でカタログ全体の5分の3が割り当てられています。

ミシンの種類

ミシン会社名には大別して4種のミシン名が付されています。

まず、シンガー社にみられるように「ソーイングマシン」(Sewing Machine)。

次いで、ルイス(Lewis)社等に附された「ブラインドステッチマシン」(Blind Stitch Machine)、マルコ(Marco)社のような「刺繍用ミシン」(Embroidery Machine)。

そして、リース(Reece)社の「釦穴かがりマシン」(Buttonhole Machine)です。

なお、ミシン史を扱う研究群は、戦前期ミシン部品の国産化はシンガー社製ミシンをはじめとする輸入ミシンの修理に必要とされた点を指摘します。

しかし、部品国産化からミシン本体国産化へという連動性は途上国日本に当てはまるだけで、当時の米国では無関係でした。

部品国産化からミシン本体国産化への流れがアメリカの場合は当てはまりません。19世紀後半の米国ミシン製造工場でこれを確認できます。「ミシン製造業の生産体制 : 揺籃期の多様性」をご参照ください。

ミシン製造業の生産体制:揺籃期の多様性
米国ミシン製造業は1850年代から進展していきました。当時、ミシン製造業は揺籃期にありました。同業者たちは競争を激しくさせながら、独自の工場制度を確立していきます。19世紀末になると過当競争は定着していき、シンガー社が強者となっていきます。

日本ミシン会社・主要取扱製品・企業特徴・各分量

次に下の表は「広告索引」部分に記載されている企業名と取扱製品をリスト化しました。

「ブラザーミシン販売株式会社」や「美馬ミシン工業株式会社」などの大手ミシン企業から、ミシン針、ベルトなどを製造する製作所まで、国内企業60社ほどのリストです。

割かれたページ数はだいたい1社1ページ。

一部のメーカー名は、表記通りにせず、判明分は、現代の発音表記で一般的と考えられるものに適時修正しました。

以下では工業所、製作所、株式会社などを全て企業と記して話を進めます。

日本語表記主要取扱製品と企業特徴
ブラザーミシン販売株式会社自社ミシン「ブラザー」5種2~
株式会社 増島製針所ミシン針「オルガン」、編機針、ボビン、ボビンケース4
「Needle List」(ミシンに対する、オルガン針、シンガー針の対応表)5
株式会社 川端ミシン製作所トランスミッター「コクヨ」と付属品(足踏板、プーリー等)6
中島ミシン株式会社自社ミシン「サーダー」10種、皮漉機、電気布裁断機、サーダー用部品、ドイツ「パフ」社ミシン。総代理店はドイツ「フオチユナー」社製品、日鷹電気布裁断機。特約店は、ブラザー、三菱、ペガサス、福助、光洋、ジューキ、三伸、トレージャー、ヒロセの釜、オルガンミシン針、ニッピー皮漉機、ナショナルミシンモーター、パアフ工業用。7~
川原ミシン工業株式会社日本販売総代理店(アドラー社、マルコー社、アルピン・ポーカット・デヴィッタ社、いずれもドイツ)10~
株式会社 三和製作所自社ミシン「ダイヤ」。ユニオン・スペシャル社製袋口縫用ミシン各種パーツ。12~
株式会社 チハヤ鉄工所トランスミッター「チハヤ」、糸巻き、ナイフ研磨機、電気絨布裁断機など。14~
松下ミシン店自社ミシン「タイタン」、各種ルーパー。各国特殊工業用ミシン直輸入、日本総代理店はイーストマン社(米国)、ストローベル社掬縫ミシン(ドイツ)。16~
有限会社 紅製作所各種工業用ミシンの改造、特殊部分品製作。18
ヤシマミシン株式会社自社ミシン「ヤシマ」、特殊ミシン製造。19
藤原精機工業所電気布裁断機。20
岩瀬ミシン株式会社自社ミシン「プリンス」。21
スヰセイ工業株式会社各国輸入特殊ミシン売買・修理・改造、動力第一式、部品・製造卸。22
百瀬ミシン株式会社自社ミシン「ナショナル」、ユニオン・スペシャル社特殊ミシン改造。23
株式会社 広瀬製作所回転釜(カマ)、ヘム、ボビンケース。24
大野ミシン株式会社代理店(ブラザー、トレージャー、プリンス)、特約店(三菱、ジューキ、ヤマト、ペガサス、日鷹電気布裁断機、オルガンミシン針・油)、欧米各国輸出入商、中古。25
関根工業株式会社回転釜(カマ)。26
イワセミシン カムパニー日本全国総代理店(デュルコップ、モーゼル)、日本総代理店(アメリカン掬ひ縫ミシン)、東日本総代理店(仏国コーネリー刺繍ミシン)。27
宮武ミシン株式会社工業用部分品付属品。特約店(工業用トレージャーミシン、オルガン印ミシン針、工業用三菱ミシン、ペガサスミシン、サーダーミシン)。28
日鷹鉄工株式会社自社の電気布裁断機(自動研磨装置付丸刃、反揆軌道モーター付その他)。29
合田製作所自社の電気布裁断機用刃(メス)。30
合資会社 中尾ミシン商会クインライト(Queen Light)高周波ミシン及びウェルダー製造。31
小林工作所工業用特殊ミシンルーパー製作。32
安井ミシン店ブラザーミシン特約店(特殊用厚物用ミシン、職業用工業用ミシン)、代表者安井徳義。33
ゴールドスターミシン製作所自社ミシン「ゴールドスター」製造発売元。34
服部ミシン株式会社特殊工業用中古ミシン直輸入・販売・改造・修理(ユニオン・スペシャル、ルイス、大和、ブラザー、パフ、三菱、ジューキ、日鷹電気布裁断機)。35
株式会社 淸水ミシン商会特約代理店(パフ、ストローベル、ユニオン・スペシャル、リース、ルイス)、国産メーカー特約代理店(ジューキ、ペガサス、アサヒ電気布裁断機、不二プレス仕上機、その他)。36
パーカー商事株式会社日本総代理店(パフ)。37
西村礦油株式会社ミシン油。38
多田製作所工業用ミシンテーブル。38
有限会社 太成ミシン商会自社ミシン「TAISEI」。39
セイコーミシン株式会社自社ミシン「SEIKO」製造・卸・輸出。40
株式会社 宮武ミシン商会自社ミシン「リズミカル」製作直売、特約店(日立ミシン及家庭電気製品、大和印工業用ミシン、MK印電気裁断機、後藤式ネーム折器)。41
川竹ミシン商会特殊工業用ミシン専門店。41
中山ミシン商会テーパー利用糸立装置、各種工業用ミシン、部分品、修理改造。42
寿ミシン工業株式会社特殊ミシン販売・改造・及部品製作、営業種目(ユニオン・スペシャル、ペガサス、アドラー、マルコ、モーゼル)、各種電気裁断機並動力台装置一式。42
株式会社 山本ミシン工業所各種改造ミシン(特許学生帽子用屁付ミシン、革手袋上下送り改造ミシン、ゴザ縫改造、軍手用リンキング、メリヤス用リンキング、麦稈帽子カンヌイ・紙袋口縫。43
株式会社 川崎商会代理店(各種工業用ミシン、オルガン針、三菱、福助ミシン)。43
三幸ミシン有限会社総代理店(ジューキ特殊ミシン)、代理店(大和ミシン)。44
吉田ミシン商会工業用特殊ミシン部分品製作直売及卸専門(フエルド各種ゲージセット、ナイフ・ルーパー、メス、各種ラッパ等)。44
株式会社 丸岡ミシン商会棉・毛メリヤス用ミシン販売、部分品製作・改造修理。DIYA印の高給特殊パーツ取扱。創業大正15(1926)年。45
合資会社 石井工場各種量産専用工作機械(5方向多軸穴穿専用機)。45
菅原ミシン商会自社ミシン「スガハラ」(掬縫ミシン)。46
東京ミシン工業株式会社自社ミシン(各種工業用・特殊用・家庭用)並部品製造卸。46
大谷ミシン工業所自社ミシン(オートマチック・サークラー・ステッチ・ミシン─ブラジャー用OM式)。47
日本皮機製造株式会社自社皮漉機「ニッピー」、丸刃。47
増田工業株式会社家庭用(針棒、押棒、丸玉、角玉、パイプ)、工業用(針棒・押棒・上シャフト、パイプ)。48
株式会社 神原ミシン商会メトリック自動つば縫機(電動本縫ミシン全てに取付け可能)、メトリック自動停止装置を付けると一人でミシン数台の操作が可能。※サンプル写真はシンガー社製ミシンにつば縫機を取付けたもの。48
株式会社 森島精機工業所各種パーツ(針棒、押棒、ミシン用ベルト、電気タック、カッターシャツ用襟返し、ナイフ研磨機、ピンキング用、各種ハンマー等)。49
山本ミシン工業株式会社輸入各種工業用ミシン販売・改造・修理、営業種目(ルイス、リースボタンホール、コーネリー、マイミン電気裁断機、ヤマト・マンコン印)。50
岡本ベルト製造所月星印ミシン用ベルト。ロゴには「Osaka Okamoto Tukiboshi Belt)。50
上二・淸水ミシン商会自社ミシン「サンセイミシン」。改造、考案、設計、特殊部品の製作、大修理。51
株式会社 青柳ミシン商会特殊工業用ミシン専門、直輸入商。51
上三・大野ミシン商会自社ミシン「七福ミシン」。特殊工業用ミシン販売・修理・改造・部分品・動力台装置一式。代理店(三菱ミシン特殊工業用)。52
有限会社 渡辺ミシン商社特殊ミシン直輸入。52
美馬ミシン工業株式会社自社ミシン「ペガサス」工業用ミシン。代理店(ユニオン・スペシャル、ユー・エス・ブラインド・ステッチ、アメリカン・セフティ・テーブル、アムコ・モーター・マシン(以上、米国)、ベロー(英国)、パフ(独国)。取扱品(内外縫製工場設備機械取扱販売、その他各種縫製機械直輸入販売)。53
登載された企業の特徴

詳細にみると取扱製品や業種がまちまちで入れ込んでいます。

自社製ミシンを製造販売している企業から、外国製ミシン・国産他社ミシンの代理店、あるいはミシンの改造・修理、部品の製造販売などを行なう企業にいたるまで。

登載された57社のうち、自社ミシンの製造販売を手がける企業は17社。たいていの場合、ミシン商標とメーカー名は一致しますが、煩雑をいとわず以下に17社の商標と企業名を列記します。

自社ミシンを製造販売する企業

ブラザー(ブラザーミシン)、サーダー(中島ミシン)、ダイヤ(三和製作所)、タイタン(松下ミシン店)、ヤシマ(ヤシマミシン)、プリンス(岩瀬ミシン)、ナショナル(百瀬ミシン)、ゴールドスター(ゴールドスターミシン製作所)、TAISEI(太成ミシン商会)、SEIKO(セイコーミシン)、リズミカル(宮武ミシン商会)、スガハラ(菅原ミシン商会)、不明(東京ミシン工業)、不明(大谷ミシン工業所)、サンセイミシン(淸水ミシン商会)、七福ミシン(大野ミシン商会)ペガサス(美馬ミシン工業)。

当時のいわゆる国産ミシン・メーカー大手のうち、三菱、ジューキ、大和の3社は自社広告としては掲載せず、他社広告に「ジューキ特約代理店」といったかたちで登場するのみ。

ジャノメの場合は自社広告だけでなく代理店広告とも記載されていません。また、米国シンガー社の代理店として広告している企業も確認できません。

メーカーと販売店の分離がめざましく複雑である印象です。

面白いのは、神原ミシン商会の広告。付されたサンプル写真はシンガー社製ミシンに「つば縫機」を取付けたものでした。
文献 蓮田重義編『工業用ミシン綜合カタログ』工業ミシン新報社、1958年

松下良一カタログ

松下良一編『'74縫製機器総合カタログ』松下工業、1974年

松下良一編『’74縫製機器総合カタログ』松下工業、1974年

本書は1974年に刊行されたものです。

当時は外国製ミシンだけでなく日本製ミシンも世界中に出回っていた頃です。

これまで紹介した2点よりも少しは、現代に近い機種や高齢者の方に馴染みのある機種が出てきます。

奥付をみますと、本書の発行所と記された松下工業(株)は大阪市天王寺区上之宮町20に所在しています。ネット検索をかけたところ、天王寺区上本町7丁目に本社を構える松下工業株式会社がヒットします。

同社の案内ページには

当社の事業は、工業用ミシンの取扱いから始まり、ベッドマットレス製造装置、無溶剤系接着機器、またそれを利用した熱転写ラベルまで展開

会社案内|松下工業株式会社

とあります。

日本の工業用ミシンの製造販売が本格的に進展するのは戦後のことですから、世代的にみて、松下良一は松下工業株式会社の創業者じゃないかと推測します。同社の創業は1946年です。

松下良一カタログもまた、蓮田重義カタログにまして、精力的な資料収集と情報整理をしています。かなりミシンの人気が高かったのだと再認。

刊行目的と完成経緯

松下カタログから当時のミシンの状況を拾ってみます。

工業用ミシン及びその関連機器の高性能化は、衣料産業のファッション性、高級化とも常に同調しており、特にミシン産業においては最近縫製作業の合理化を図る専用機や省力化機器の開発も内外のメーカーにて、数多く発表されています。

松下良一編『’74縫製機器総合カタログ』松下工業、1974年、3頁

工業用ミシン高性能化していると書かれています。

高性能化は次のような方向にありました。

当時は、アパレル産業における縫製合理化をめざした専用マシンや省力化をめざした機器まで出てきています。ミシンの高性能化にはアパレル産業の高度化がセットになっていることがわかります。

アパレル産業側の状況を少し詳しくると、よく次のようにいわれます。

戦前にアメリカで行なわれていたアパレル工場のシンクロシステムやコンベアシステムは、1950年代後半に日本でも導入されるようになります。

そのもとで、

  • コンピュータ裁断
  • 本縫ミシンの高速化
  • 自動糸切装置の装着やボタン付ミシンの導入
  • 高性能アイロンとプレス機の採用
  • 人体計測データの集積や既製服サイズ基準の設定(既製服標準寸法表の設定)
  • 型紙作成の自動化
  • 接着芯地による衣服形態の安定化
  • ミシン高速化に耐えるミシン針や縫糸の開発
  • 工程間搬送の自動化

などが実現していきました。

刊行目的

ミシンや関連機器の高性能化によって、ミシンなどのマシンはかなり多様になっていたと思われます。戦前から米国ミシンは細分化されていましたが、戦後の文脈ではとくに関連機器の方が細分化されたでしょう。

松下良一は本カタログを刊行するにあたり、次のような刊行目的を述べています。

この機会に内外の縫製機器の資料を収録し、目的、適正な用途活用の事例等を掲げ、実務者の認識を明確にし、広くご紹介をする必要性を痛感し、各メーカーの積極的な御協力や御好意を得まして編集致しました。

松下良一編『’74縫製機器総合カタログ』松下工業、1974年、3頁

内外の資料を踏査したとあり、脱帽です。

膨大なミシンから本カタログに選んだ観点は次のように述べています。

現在、比較的に日本でよく使用されている機種とその関連機器を集成しました。

尚各種類の縫製に使用する機器を基本として、出来るだけ数多くの機種や用途別の機種も掲載しましたので、縫製上必要な機械や器具の調査、研究や、工場の合理化、近代化、省力化の計画立案に役立つように配慮を致しました。

松下良一編『’74縫製機器総合カタログ』松下工業、1974年、4頁

それでは、このような刊行目的を達成させるために、編者はどんな機種選定を行ったのでしょうか。

機種選定

カタログに掲載した機種は次の2点から選定を行ないました。

  • 一般に市販されているミシン
  • 工業用ミシン関係組合・団体加入メーカー・ミシン展示会出品の内外メーカーの製品

これらは日本だけでなく世界中で使用されている機器がほとんどとのことです(同書4頁)。

留意点や説明方法など

本カタログの説明はコンパクトで丁寧です。

繊維製品やアパレル製品を取り扱っている人たちにもわかりやすいように説明しています。典型的なのはすべての機種説明に縫い見本が記されていることです。

とくに次のような糸で説明しています。

  1. サブクラスのないミシンは単一機種として、機能や用途を詳細に説明。
  2. サブクラスのあるミシンは、特徴と共通仕様の欄を設け、説明に縫見本を付加。
  3. ミシンを含む自動機器関係は、ミシンの分類に併載したした、一般によく使われる機器を優先的に掲載。

本カタログはミシン以外にも、裁断装置、プレス装置、縫製関連機器、アタッチメントなども取りあげているので、戦後ミシンの細分化を詳しく知ることができます。

現金価格や定価と記された表示価格は1974年1月~4月の現在価格です。

総目次

  • 編集要旨
  • 本書使用上の注意・ミシン番手対照表
  • 縫型・見本の略図、記号
  • 目次(国内商品)
  • 日次(海外商品)
  • メーカー別主要な製造機器一覧表
  • 国内商品ミシンの部
  • 国内商品裁断装置の部
  • 国内商品プレス機の部
  • 国内商品縫製関連機器の部
  • 国内商品アタッチメント
  • 海外商品ミシンの部
  • 海外商品裁断装置の部
  • 海外商品プレス機の部
  • 海外商品縫製関連機器の部
  • 追補
  • 日本工業規格
  • ミシン針概要・ミシン針の技術資料
  • 二重環縫ミシンのゲージセットの説明
  • 全国ミシン関係団体組合名簿・ミシン関係文献案内
  • 繊維関係の関係官庁団体試験所
  • 奥付
  • 広告

文献 松下良一編『’74縫製機器総合カタログ』松下工業、1974年

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