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ミシンの特徴3:袋口縫ミシンからみた広い用途

ミシンの不思議
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この記事では、広い用途というミシンの特徴を紹介しています。

服や関連品以外に最も広く使われていた袋口縫ミシンが例です。

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ミシンを置いた工場の広がり

表1 ・表2 は、『工業統計表』の「主要作業機械及設備数」から工業部門別設置数を算出したものです。表作成に関する注釈は煩雑になるので、この項目下部に青色で囲っておきます。

表1 日本の従業者3人以下工場における主要作業機械の設置状況(1939年)

機械\工業 単位 紡織 化学 金属 機械器具 窯業
土石
製材
木製品
食料品 印刷
製本業
その他
撚糸機 854,885 160 341 374
織機 力織機 46,199 18 8 3 47
手機 35,809 6 39 13 3 2 36
メリヤス機 素地編機 11,636 30 4 1 203
靴下編機 6,544 15
ミシン 92,966 205 27 127 11 104 28 19 5,848
金属・機械加工 キュポラ 257 100 1
旋盤 11 78 5,529 23,156 4 23 1 9 8
ボール盤 12 4 8,941 22,404 5 110 4 1 42
フライス盤 1 914 3,765 8 1 2
形削盤 584 2,530 1 103 1 19
陶磁器焼成窯 2 12 1,754 1 30
植物油搾機 1,146 4 1 1 9 2
鋸盤 帯鋸盤 1 15 16 434 1 5,009 1 198
円鋸盤 7 31 18 620 14 25,612 16 7 767
活版印刷機 3 4 2 15,876 333

表1 からは、ミシンが、旋盤、ボール盤、フライス盤、および鋸盤と同様にさまざまな部門で設置されていたことがわかります。

紡織工業向けの機械のなかでは撚糸機以上に色んな工場に置かれています。撚糸機は糸を撚る(絞ったり捻ったりする感じ)ことで糸を強くする機械です。糸から紐を作るわけです。

なお、繊維機械が紡織工業と化学工業(化学繊維製造業を含む)に集中しています。この理由は当時開発されはじめた化学繊維が化学工業に、天然繊維が紡織工業統計されていてからです。

表2 日本の従業者4人以上工場における繊維機械の設置状況(1939年)

機械\工業 単位 紡織 化学 金属 機械器具 窯業
土石
製材
木製品
食料品 印刷
製本業
その他
精紡機 16,386,131 165,240
撚糸機 5,933,371 365,595 853 820 99,845
梳篠機 1,821
自動織機 64,495 1,136 32
力織機 608,828 975 212 32 493 1,112
手機 14,572 44 12 3
捺染機 497 4
メリヤス機 27,472 2 58 221
靴下編機 14,982 8 79
コットン式靴下編機 3,756
ミシン 85,785 2,230 11 443 5 8 67 30 2,157

表1・表2ともに、撚糸機、力織機、ミシンの3種は、金属、機械器具、窯業・土石、製材・木製品、食料品、印刷・製本業、といった異質部門の多くに設置されたことが確認されます。

これらの部門に共通する作業として考えられるのは梱包・出荷の局面であり、これら3 種の機械は、紐の作成(撚糸機)、袋地の作成(力織機)、袋口縫い(ミシン)に利用されました。

上の2つの表は、産業横断的に設置されたという意味での分散性も示します。

織るという作業は経糸と緯糸を交差させる作業ですが、縫うという作業は「縫う」としか言いようのない程度にまで抽象性を帯びています。

「主要作業機械及設備数」は1929年に初めて登載されますが、以後1935年まで収録されていません。そのうち、ミシンが初めて記載されるのは本表の1939年です。表の作成にあたり、表1 に用いた「下巻」(調査対象は職工3 名以下)では登載機械種が少ないためすべてを示しました。表2 に用いた「中巻」(調査対象は職工4 名以上)では機械種が多いため、繊維部門で主として利用される機械に絞りました。
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袋口縫というミシンの作業

しかし、撚糸機と力織機は、それぞれ、糸を撚る作業と布に織り上げる作業であり、紡織工場の内外を問わず変わりません。作成物も業種を問わず一定で、糸を撚って紐を作るか糸を織って布を作るかです。

これに対しミシンは、縫製工場では衣料品生産を行ない、また出荷用の袋口縫も行ない、他の産業部門においては後者(袋口縫)に特化して使われていました。

つまり、紡織工場の内外で作業内容が変わったり、作成物が変わったりします。

袋口縫い用ミシンは農業製品や工業製品などを袋に詰めて積出する時に、最後の一片を縫う時に使います。

次の段落に大蔵省の貿易報告を示すように、アパレル産業以外にミシンが利用された使い道で最も記載が多かったのは、袋縫い用ミシン(袋口縫用ミシン)でした。

大蔵省『外国貿易概覧』にみる袋口縫ミシンの広がり

大蔵省の『外国貿易概覧』には、1914年報告に「粉袋縫用、せめんと袋縫用、米袋縫用、麻袋縫用、毛布ノ縁取用」(1914年版、710頁)のミシンが、従来の環縫ミシンや本縫ミシンだけでなく、価格相場に記されるようになりました。

また「横浜、神戸方面ニテハせめんと、豆類の輸出多きに達し袋縫用のもの需要多かりし」(1917年版、619頁)とあるように、輸出搬送用の袋を縫うために多用されました。

アメリカ多国籍企業の研究者マイラ・ウィルキンズによると、アメリカのシンガー社は「穀類の包装業務のみ」を行なうイギリスの工場を買収したことがあります。

マイラ・ウィルキンズ『多国籍企業の史的展開―植民地時代から1914年まで―』江夏健一・米倉昭夫訳、ミネルヴァ書房、1973年、269頁
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ユニオン・スペシャル社の特殊ミシン例

工業化の進展とともに、袋口を縫って製品を積み出すことが活発になると、ベルトコンベア付きミシンや計量機付きミシンが開発されていきました。

その目的は、製品の入った袋の正確な重さを維持するためや、スムーズに出荷状態にもっていくためです。

このようなミシンの進化のあり方は20世紀的とよべるもので裁縫外機能が加わった点を特徴にします。

この点は「ミシンの進化 : 19世紀型と20世紀型」に分かりやすくまとめています。その記事でベルトコンベア付きミシンをシンガー社製ミシンから紹介しました。「20世紀型進化 : 裁縫外機能の追加」です。

ミシンを袋口縫に使うなら、その袋と中身を運搬したり、重量を図ったりする機能も欲しいところです。

これらの機能を備えたミシンを少数ずつながら製造販売していました。
以下では特殊ミシンをたくさん作っていた米国ユニオン・スペシャル社のミシンを紹介します。

たとえば、ユニオン・スペシャル社「袋口縫移動式テーブル」です。

ついで、同社「自動式袋口縫」です。

最後に、同社「重量物運搬用(コンベア水平式)」です。

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袋口縫ミシンの補足

ミシンの貿易報告やカタログには袋口縫いミシンの普及について並々ならぬ大きな動向を読みこんでいました。

既に引用したもの以外を下に紹介します。

其ノ他麻袋ヲ裏返シ縫直シニ使用スル爲へらくる、あんてうす等ノ如キ特殊みしんモ本年相当ニ売行キタリ
大蔵省『外国貿易概覧』1921年、483頁

「へらくる」、「あんてうす」は、ともに麻袋縫合用のユニオン・スペシャル社の製品です。
ヘラクレス、アンテアスと戦後のミシン・カタログでは称される両者は、いずれも二重環縫ミシンとして、テニスの網、漁網、絨緞、クッション、馬具等の縫製にも耐えうるものでした(蓮田重義『工業用ミシン総合カタログ』工業ミシン新報社、1958年、183頁)。

上に紹介した同社2製品(ヘラクルス、アンテアス)は次のようにも記されています。

「セメント、肥料等を入るヽ爲麻袋の需要近来激増し」(大蔵省『外国貿易概覧』1922・1923年報告)とあり、衣料製品にとどまらないミシン需要が大きなウェイトを占めていました。

この頃には小麦粉袋口縫用ミシンも輸入されていて、大阪製粉会社の注文によって十数台が輸入されたのが嚆矢でした。漸次、他の製粉会社にも普及する点が予想されています。

ヘラクレス、アンテアスは次の記事もご参照ください。

関連 ユニオン・スペシャル社:工業用ミシンメーカーの歴史

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おわりに

ミシンは作成物を特定しないという抽象性を有しています。

つまり、精紡糸を生産する精紡機や、織物を生産する力織機とは異なり、ミシンには特定物(ミシンなら衣料品および関連品)を生産する必然性が無いのです。

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