子供にミシンが必要な理由

著書紹介:ミシンと衣服の経済史 地球規模経済と家内生産

岩本真一『ミシンと衣服の経済史―地球規模経済と家内生産―』初版とオンデマンド版の表紙の写真です。ミシンの思い出
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このページでは、2014年に刊行した私の著書を紹介しています。
書名は『ミシンと衣服の経済史』、副題は「地球規模経済と家内生産」です。
2014年7月に思文閣出版から出していただきました。表紙のイラストとデザイン(装丁)は妻がしてくれました。
のちに本書は日本図書館協会選定図書に指定されました。
幸いに初版は売切れましたが、学術書・専門書は売れないご時世ですので2刷目は諦め。
代わりにオンデマンド版を出すことにしました。『ミシンと衣服の経済史』オンデマンド版は現在、出版社サイトで購入できます。
ミシンと衣服の経済史【オンデマンド版】|出版|思文閣 美術品・古書古典籍の販売・買取、学術出版
19世紀後半から20世紀半ばにかけて、シンガー社のミシンは世界を席巻し、東アジアはその最終市場であった。こうした状況下でのシンガー社の日本進出を中心に、近代日本におけるミシンの普及と衣服産業の展開を分...

本書の概要

本書は、近代日本における衣服産業の展開をミシンの導入と普及に即して叙述したものです。
これが本書の大きな枠組みです。
ミシンは、軽便さゆえに家にも工場にも設置され、家内労働や工場内労働を通じて20世紀日本のアパレル産業に貢献しました。日本は19世紀後半にドイツ製ミシンを主に輸入していましたが、20世紀転換期からシンガー社製をはじめとする米国製を多く輸入するようになりました。

ミシン

米国ミシン製造業では1850年頃の実用化当初から国内競争が激化し、19世紀末にイノベーションが停滞する事態に陥ります。詳しくはこちら
過当競争な激しくなるなか、シンガー社は過剰生産処理を目的に早々と多国籍企業化し、1870年代までに多くの地域を市場圏に取り込みました。詳しくはこちら
1880年代には最後の砦、ミシン最終市場である東アジアへ輸出攻勢を試みました。
まず、1880年代に中国(清国)進出を果たしますが、4年間で撤退。
次いで、居留地貿易撤廃後の日本に焦点を当て直しました。そして、内地雑居後の1900年以降に滞日輸出を実現させます。
その後、シンガー社の中国再上陸には日本帝国の拡大が相まって、結果的にグローバル規模での販売市場が形成されました。日本帝国の拡大が米国企業の世界制覇を達成させたという皮肉です。
販売面からみたシンガー社の多国籍化
1855年にシンガー社はパリ万博で初めて金賞を受賞しました。これを契機にパリ支店を開設します。その後、海外販売店の拡大は1856年のグラスゴー(英国スコットランド)、1858年のブラジル、1863年のドイツと続きました。

衣服産業(アパレル産業)

本書は、これまで断片的にしか知られてこなかった近代日本の衣服産業(アパレル産業)について、工場内生産のみならず家内生産も広く取りあげました。
日本のアパレル産業は、19世紀後半に政府主導による軍服生産(既製服生産)と開港地の民間主導によるスーツ生産(注文服生産)の両輪で勃興しました。
その後、あちこちの工場主は近所の人たちと関わって、産業は内職や家内生産の形で広い裾野を形成していきます。内職者は購入したミシンや工場主から借りたミシンを駆使してアパレル産業を突き動かしていきます。
家内生産と工場内生産と連動した展開を示したのがアパレル産業の特徴でした。
20世紀第1四半世紀には足踏式ミシンが普及し、第2四半世紀にミシン普及経路が学校・メディアなどへと多様化します。
この流れのもとで、商品化される衣料品は男性向けから女性向け・子供向けへと拡大し、上衣・下衣、肌着・下着等の衣料品、および肩掛・手袋・帽子などの関連品・雑貨がどんどん商品化されていきました。
1930年頃にアパレル産業は一定の経営形態を確立しました。
アパレル工場では1930年代前半に1事業所あたり平均従業者数が15名程度に固定化されていきました。この規模は約9名という2000年代規模の原型を作りました。
戦前期に工程間分業は工場内・地域内分業に留まりました。しかし、戦時期になると国家規模へ拡大し、20世紀第3四半世紀には国際間分業にまで拡大しました。
グローバル規模で労働問題や経営問題が発生している点を本書の最後に総括しています。
ミシンに関心をもったきっかけ
私がミシンに関心をもったきっかけは、1940年に作られた1点の史料です。一部を紹介します。史料の整理や解読を続ける間に一番驚いたのが、この写真に示した「裁縫機登録調査書」です。2007年のことだったと思います。
岩本真一『ミシンと衣服の経済史―地球規模経済と家内生産―』初版とオンデマンド版の表紙の写真です。

岩本真一『ミシンと衣服の経済史―地球規模経済と家内生産―』初版とオンデマンド版

本書の目次

序章 問題の所在と本書の課題

  • 第1節 問題の所在―消費財と生産財― (1)ミシンの認知と初伝ルート(2)家事労働と家内労働―ミシンを通じた近代女性像とその問題点―(3)消費財と生産財―非工場におけるミシン―
  • 第2節 本書の課題と構成(1)本書の課題(2)本書の構成

第1部 ミシンの特質と普及過程

第1章 繊維機械としてのミシン

  • 第1節 繊維機械の比較(1)―開発時期と機械化内容―
  • 第2節 繊維機械の比較(2)―工場動力化率― (1)紡績機(2)力織機(3)ミシン
  • 第3節 ミシンの特徴 (1)高度な設置自由度(2)簡便性(3)広範な用途

第2章 ミシン多様化の意味

  • 第1節 米国ミシン会社とイノベーション (1)19世紀末米国ミシン製造業の進歩と停滞(2)シンガー社製とユニオン・スペシャル社
  • 第2節 シンガー社製品の多様性 (1)データの概要とデータ処理(2)割当台数と機種数の関係(3)定番機種の傾向(4)定番機種以外の時期別傾向
  • 第3節 多様化と競争基盤 (1)作業面の基盤(2)回転速度の基盤(3)動力面の基盤とミシン進化の方向性

第3章 ミシンの東アジアへの普及

  • 第1節 シンガー社の対東アジア戦略 (1)1880年代の未開拓市場―シンガー社の対東アジア進出前史―(2)中国市場の難航と対日輸出策の浮上
  • 第2節 東アジアにおけるミシン普及 (1)日本列島(2)台湾(3)朝鮮半島(4)中国大陸(5)小括

第4章 近代女性の共時性と衣服商品化の波

  • 第1節 服を作る女性―裁縫教育と良妻賢母像― (1)20世紀前半女子教育にみる裁縫への関心(2)衣服生産と女性家族(3)上海の女学校授業科目(4)上海愛国女学の開校理念と裁縫教育(5)裁縫教育の意義と貨幣経済の理解
  • 第2節 服を買う女性―都市遊歩とモダン・ガール像― (1)衣服商品化―見える外衣と見えぬ下着―(2)百貨店形成(3)遊歩する女性―モダン・ガールと新女性―
  • 第3節 二重の洋服化―洋服の普及と伝統服の改良― (1)概要(2)東アジアにおける女性衣服の改良 第4節 衣服商品化の時間差 (1)第1 の波―衣服産業勃興の時間差―(2)第2 の波―ミシン普及の時間差と結果 ―

第5章 日本のミシン輸入動向と普及経路

  • 第1節 ミシン台数の推計とミシン導入の略史 (1)『外国貿易概覧』の概要(2)輸入台数と累積台数両推計値の算出法(3)全期間の動向と時期区分
  • 第2節 1883~1894年(第1期) : ミシンの初出 (1)ミシンの初出(2)外国製ミシンの動向―ドイツ製中心期―(3)衣服産業の動向―陸軍被服廠と洋服・洋傘工場―
  • 第3節 1895~1913年(第2期) : 足踏式ミシンの普及 (1)ミシンの認知(2)外国製ミシンの動向―ドイツ製から米国製への移行―(3)ミシン機種の動向―特殊ミシンと電動ミシンの初出―(4)衣服産業の動向―品目の拡大と輸出向メリヤス業の進展―
  • 第4節 1914~1937年(第3期) : ミシン普及経路の多様化 (1)外国製ミシンの動向(2)ミシン機種の動向―特殊ミシンの拡大―(3)衣服産業の動向―衣料商品化の拡大と輸出向メリヤス業の浮沈―(4)ミシン普及経路の多様化(5)ミシン導入の実質的完了(6)『概覧』以後の動向―日本ミシン製造業の成立―
  • 第5節 1937~1945年(第4期) : 輸入の途絶と国産の台頭 (1)国産ミシンの動向(2)衣服産業の動向―衣料商品化の拡大と戦時経済― 第6節 小括―ミシンと衣服産業― (1)足踏式ミシンの多様性(2)ミシンの累積

第2部 衣服産業の形態と展開過程

第1章 衣服産業の類型―規模と生産体制―

  • 第1節 衣料品部門産業化の概要と概念 (1)衣料品部門産業化の概要(2)衣服産業の概念
  • 第2節 全体動向―出荷額の推移と材料生地の傾向―
  • 第3節 規模別4類型の基準
  • 第4節 規模類型と諸工場 (1)大規模工場(2)中規模工場(3)小規模工場(4)家内生産
  • 第5節 規模の固定化 (1)工場規模の推移と規模の固定化(2)工場数および従業者数の推移

第2章 衣服産業の地域分布

  • 第1節 統計類の比較と『工業統計表』の概要
  • 第2節 府県数からみた分布類型 (1)分布類型の基準(2)分布類型と主要品目(3)品目別特徴
  • 第3節 小括

第3章 中規模工場の経営動向―藤本仕立店の生産体制と多品種性―

  • 第1節 藤本仕立店の概要 (1)創業から戦時統制期まで(2)販売例(3)顧客層
  • 第2節 生産体制―自家生産と委託生産― (1)自家生産(2)委託生産(3)設置ミシンの傾向
  • 第3節 取扱製品―多品種性と主力品の推移― (1)取扱製品の多品種性(2)多品種性の要因と織物業との比較(3)主要品目の推移と大規模顧客層の獲得(4)主要品目の取扱変化―戦時統制期─
  • 第4節 小括―安定営業の要因に関して―
この第3章にとりあげた藤本仕立店について、2冊目の単著『近代日本の衣服産業』では1冊丸ごとで分析を深めています。

第4章 製帽業の構造と展開―その多様性と工程間分業―

  • 第1節 製帽業の位置
  • 第2節 生産動向 (1)全体動向(2)専業工場と兼業工場
  • 第3節 製帽業の構造 (1)前近代からの広範な普及(2)主な帽子生地(3)工場規模と品種との関係
  • 第4節 品種別特徴と生産工程 (1)材料品種の整理(2)羅紗・セルヂ(3)麦稈(4)模造パナマ(5)フェルト
  • 第5節 小括

終章 ミシンと衣服の経済史―生産体制論と現代―

  • 第1節 ミシンと衣服の経済史 (1)近代日本におけるミシンの普及(2)衣服産業の特質―生産組織と工程間分業―
  • 第2節 現代―裁縫工場の外国移転― (1)20世紀後半日本のミシン利用と衣服産業(2)東アジアの裁縫工場(3)工程間分業の国際化 第3節 ミシンと衣服産業の先駆性

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