ボタン:中国や欧州が開港期日本に衝撃を与えた附属品

ミシンで服づくり
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ボタン

ボタンとは衣服などの開きを留めるか装飾する目的でつけられた小片です。

衣服に縫われた穴(Button Hole)やループ(Loop)を通して留めます。

英語表記で「button」、仏語で「bouton」、漢字で釦。

語源は古代ゲルマン語のbotonとも古代ラテン語のbottareと もいわれます。日本語のボタンはポルトガル語のbotaoからで、漢字の「釦」は当て字です。

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ヨーロッパのボタン

ヨーロッパでボタンが利用されたのは、東洋から蜻蛉玉薊に似た蜻蛉玉(瑠璃玉)が伝来した13世紀以降のことで、それ以前は紐かブローチが使われていました。

この点を詳しく述べた服飾辞典がありません。

とりあえず、既に隋・唐の時代に中国ではガラス工芸が非常に発達しており、玻璃と呼ばれ、後代に玻璃硝子または火齊珠と呼ばれるようになりました(南方熊楠『続南方随筆』岡書院、1926年、5頁)。

中世ヨーロッパでは地位表示(社会的威信)の ためにボタンの装飾に凝られたと言われますが貴族層もとくに男性の話。

庶民層は紐で結んでいたと推測されます。

女性がボタンを利用し始めたのは、テーラード・スーツの普及し始めた19世紀末のことです。

この頃、金、銀、象牙、宝石、布などを用いた精巧な品々が無数に作られ、20世紀中期からは合成樹脂やプラスチックへ偏向しました。

歴史的には、19世紀までのスーツやジャケットに広く利用された袖留ボタンのように、現代では装飾ボタンに変化したものも多いです。

しかし、辞書類で装飾用と明記されたボタンは、ほとんどフロッグ・ボタンしか載せられていません。

13世紀のヨーロッパへ影響を与えた蜻蛉玉(Chinese Button)が現代も旗袍に活かされています。

可愛らしいアイコンとは裏腹に、数世紀にわたるボタンの歴史を留め続けた重さに驚きを隠せません。

ボタンの種類

ボタンの種類は様々ですが、材料、形、構造、設置箇所(用途)の4点で区分されることが多いです。

1.材料

貝殻、石、宝石、金属、ガラス、木、竹、珊瑚、果実殻(団栗、ココナッツetc.)、角、象牙、鼈甲、陶磁、ゴム、プラスチック、合成樹脂、紐類・布類。

このうち金属は、真鍮(brass)、黄銅、銅、アルミニウム、鉄、鋼鉄、金、銀など。角はバッファロー・ボタン(Buffalo Button)など。

布類は包み釦(クルミ・ボタン)、 クロッシェ・釦(Crochet Button/鉤針編)。
合成樹脂は、ペークライトやプラスコンを混入させたコンポジション釦(合成釦;Composition Button)や牛乳中のカゼインを混入させたタクト釦(Lacto Button)など。

2.形

球、半球、天丸、平、皿、猪口、団栗、紡錘、鼓など。直径は1~5cm程度。

3.構造

  • 糸通し穴が裏から表に貫通した表穴
  • 裏側を通り、表には見えない裏穴(シャンク;Dhank)

4.設置箇所(用途)

ワイシャツなどの二重カフスを留めるのはスリーブ・リンク(Sleeve Link)ともカフ・リンクス(cuff links)ともいわれます。

通称のカフス・ボタン(Cuffs Button)は俗語。女性用ブラウス(Blouse)にも用いられます。

ワイシャツの襟を留める小さいボタンはカラー・ボタン(Collar Button)。

また、下側が凸、上が凹になった二つ一組の金属製ボタンはシャンク・ボタン(Shank Button)。

どちらも生地にぴったり縫い付けます。

ビニールの雨着、傘、ハンド・バッグ、ズボンなどに使われます。

装飾用ボタンがよく用いられるのは、袖口の開き見せ部分、スナップ留めの打ち合わせの上、ポケットの蓋の上、肩章の上、飾り短冊の上など。また、ボタンを外す格好をオシャレとする場合はアンボタン(unbutton)といいます。

最後に、既述のとおり、ヨーロッパへ最も強く影響を与えた装飾用ボタン(飾り釦、Stud)は蜻蛉玉(または、フロッグ・ボタン/Frog Button)です。

別名は多く、チャイナボタン(Chinese Button)、チャイニーズ・ノッティング(Chinese Knotting)、釈迦結びと呼ばれるもので、絹の紐を結んで作ったボタンです。上から見ると蛙に見えます。5世紀ころから中国では制作・使用されていました。

なお、妻(アトリエ・レイレイ)によると、市販で売っているチャイナボタンは紐で作ったものが多く、昔は布から細い紐を作って、その後でボタンへと結んだそうです。

アトリエ・レイレイのチャイナ・ボタン

妻の自作チャイナボタンを少しご紹介します。

“嵌心花扣”

中国の陶器「青花瓷」を思わせる嵌心花扣です。

チャイナボタンにはいろんな種類といろんな形があります、今日は“嵌心花扣”を紹介します。“嵌心花扣” | atelier leilei ブログ

一字釦のお話し

明日は二着のブラウスをUPする予定です。4月20日から名古屋に帰りますのでネットショップも少しお休みします。今日は一字釦を少しお話しします。私のチャイナ服は綿や麻が多い為、パイピングとチャイナボタンは綿生地で作っております。一字釦のお話し | atelier leilei ブログ

ボタンの付け直し。

久しぶりにこの懐かしい旗袍を出してみましたけど、一文字ボタンの付け方が不細工でした。なので古いボタンを全部取って、新しいボタンを付け直すことにします。ボタンの付け直し。 | atelier leilei ブログ

チャイナボタンのお話。旗袍的一字扣。

今回はチャイナボタンについてのお話です。 チャイナボタンと言えば、多くの方は「お釈迦結び」をイメージするでしょう。私は「一文字ボタン」と呼びます。チャイナボタンのお話。旗袍的一字扣。 | atelier leilei ブログ

今日はチャイナボタン作り

デザインはただの丸い形で簡単そうに見えますが、実はいつも作っている二つの丸い釦よりちょっと難しいです。チャイナ釦は一本のループを中折りにしてそれぞれ左右の形を作っていきます。二つの丸い形は巻き始めを渦巻きの中に隠せる為ループの始末は簡単です。今日はチャイナボタン作り | atelier leilei ブログ

追記

いつも原稿作成は5冊程の辞書を駆使して要約しています。

やはり勉強になるのは1960年代、1970年代の辞書。

角で作るボタンや貝で作るボタン、それに木のボタンなど、とても材質が豊かだったことがわかります。

「すげえな」と妻に言うと一言、「プラスチックが普及してなかったんだから当然でしょ」…。

どちらが歴史家かわかりません (苦笑)。

もとい、逆にいえばやはり感じるのが貧困急進中の現代。そもそも象牙などは狩猟禁止に向かっていることもあって、ますますプラスチック貧困の私たちですね。

それと、ヨーロッパのボタンの歴史ですが、辞書どころか服飾史の本を参照しても古代ローマ以降は12・13世紀まで記述がありません。

古代ローマで巻衣が中心だったといっても10世紀ころはどうだったのでしょうか?

巻衣のままだったのでしょうか…?!

すでにピンが開発されて使われていたのでしょうか…?!

関連サイトで紹介したページは少々ローマ時代を掘り下げていますが、他のページ同様、13世紀までは空白です…。

関連リンク

  • Button history: a visual tour of button design through the ages. – Slate Magazine – 辞書類では軽視される古代ローマのボタンを利用した衣装などを文章中心で。
  • チャイナボタン  – チャイナボタンの結び方を映像で紹介。
  • Chinese Knotting  – 江蘇省出身のSheng-hung Chenさんが作るチャイナボタン。米国NJ州が協力。
  • 旗袍のチャイナボタン – 旗袍の構成要素のうち、チャイナボタンを説明しています。立領、大襟、スリットなど、旗袍の各部位によく使われるアイテムがチャイナボタン。立領の中心を留めたり、大襟を留めて身頃を固定したり、スリットの深浅を調整したりと、旗袍での役割は大きいです。

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