子供にミシンが必要な理由

服ができるまで:繊維調達からミシン縫製までの道のり

繊維が衣服になるまでミシンで作る民族衣装・チャイナ服
この記事は約15分で読めます。
このページでは、繊維の調達からミシンで衣服を作るまでの長い道のりをわかりやすく簡単に説明しています。
簡単にといっても繊維から服まで長い道のりですので、結局8000字かかったようです…。

ミシンで衣服を作るまでの概説

ミシンで衣服を作るまでには、繊維の栽培・製造から布地の裁断・縫製までの工程が必要です。

繊維から衣服までの主な工程は次図のとおりです。

繊維が衣服になるまで

繊維が衣服になるまで

図の注です。布地(生地)は織物(テキスタイル)と編物(ニット)に限定して皮革などは無視。また、染色など途中の細かい作業や工程も省いています。

この図を説明します。

衣服のできる工程が3種類に大別される点を確認してください。衣服①・衣服②・衣服③です。
この3種類には呼び名がそれぞれあります。

産業名や服屋さんでの名称などをまとめます。

衣服の呼び方の例

  • 衣服① …〔産業名〕裁縫業・縫製業、仕立業 〔製品名〕布帛製品、縫製品
  • 衣服② …〔産業名〕メリヤス業 〔製品名〕生地編、メリヤス製品、ニット製品
  • 衣服③ …〔産業名〕メリヤス業 〔製品名〕成形編、メリヤス製品、ニット製品

各工程の産業名や職業名

繊維から加工を繰り返して衣服にいたるまでの作業の名前をまとめます。

いろいろあります。覚える必要はありませんが、上図とのパターンを整合させて覚えやすい体制にしてください。

  1. 繊維から糸へ加工する…紡ぐ、紡績、紡績業
  2. 糸から織物へ加工する…織る、織物、織物業(織布業)
  3. 糸から編物へ加工する…編む、編物、メリヤス業、ニット業
  4. 糸から衣服(・雑貨)③へ加工する…編む、編立業、メリヤス業、ニット業
  5. 織物や編物から衣服(・雑貨)①②へ加工する…裁縫する(縫う)・編む、裁縫業、仕立業、既製服産業、メリヤス業、ニット製造業

工程に関わる動詞と格助詞について

繊維から衣服まで加工していく各段階を示す動作の日本語は紡ぐ、織る、裁縫するです。これまで私はこれの動作を強調するために「繊維を糸に紡ぐ」「糸を布に織る」「布を服に裁縫する」と、出来上がったものを最終目標として「に」を授業で強調してきました。

しかし、格助詞「を」は未完成のものであっても次のような役割を示すことを知りました。

 動作・作用の目標・対象を表す。「家を建てる」「寒いのをがまんする」「水を飲みたい」

出典 を(ヲ)とは – コトバンク

この意味からしますと「既製の繊維を未完成の糸に紡ぐこと」と、「既製の繊維から未完成の糸を紡ぐこと」とは同じ意味として使えることになります。したがって「糸を紡ぐ」も「糸につむぐ」も正しい使い方です。

経済史的な背景

イギリス産業革命は1と2に必要な諸機械の開発改良に集中しました。詳細はこちら

編物は20世紀になって急速に発展した部門です。とくに糸から衣服・雑貨に一気に作り上げる4です。

この記事では前座の1・2、本題の3と5を念頭に説明します。

繊維を身近に知る方法

まず、繊維という言葉を聞いたことはあるけどピンとこない方が多いと思います。

繊維とは糸の原料です。

よく服を説明する時に「リネンの夏服」や「コットンTシャツ」などのフレーズを見ます。

  • 前者は、リネンという繊維・糸を織地にしてから夏用衣服にした商品のこと。
  • 後者は、コットンという繊維・糸を編地にしてからTシャツにした商品のこと。

を意味しています。ファッション系の言葉はあらゆる要素を圧縮するので難しいですね。

さて、このような例から、繊維を身近に知る方法があります。

それは服や雑貨に付いている商品ラベルを見ることです。一例に私のユニクロ製Tシャツとユニクロ製デニムのラベルを紹介しましょう。

ユニクロ製Tシャツ

ユニクロ製Tシャツのラベルに綿78%、ポリエステル22%と表記されています。

ユニクロ製Tシャツのラベル

ユニクロ製Tシャツのラベルには、日本語表記の箇所「JP」に綿78%、ポリエステル22%と表記されています。

このTシャツに使われている繊維は綿とポリエステルです。

8カ国の表記があります。同じ製品が少なくとも8ヶ国語の言語圏で販売されている訳です。グローバル経済を痛感する一面ですね。

ユニクロ製デニム

ユニクロ製デニムのラベルに本体は100%綿、革ラベルは牛革と記されています。

ユニクロ製デニムのラベル

次はユニクロ製デニムの商品ラベル。

日本語表記の箇所「JP」に、デニム本体は綿100%、革ラベルは牛革と記されています。

このデニムに使われている繊維は綿だけです。なお、牛革は繊維ではなく生地です。

次は私のリーバイ社製デニムのラベルです。

リーバイ社製デニムのラベル

リーバイ社製デニムのラベル

これに使われている繊維は綿(棉)とポリウレタンです。それぞれ98%、2%です。ポリウレタンは弾性繊維と記されています。綿100%よりはストレッチが効きます。

このように商品ラベルを確認することで、衣料品や関連雑貨に使われている繊維を知ることができます。

繊維の種類

繊維とは糸の原料です。

20世紀中ごろに石油を原料とする化学繊維の製造技術が向上したため、それまで単に繊維といわれていたものを天然繊維というようになりました。

そこで、次のように分けられます。

  1. 天然繊維…絹(シルク)・毛(ウールやカシミアなど)・綿(コットン)・麻(リネンやラミーなど)の4種。
  2. 化学繊維…おもに再生繊維と合成繊維の2種。前者は痛んだ天然繊維の再利用繊維(レーヨン、キュプラなど)。後者は石油を原料とする繊維(ポリエステル、ポリウレタン、アクリル、ナイロンなど)。

1と2それぞれを具体的に見ていきましょう。

天然繊維

天然繊維には絹・毛・綿・麻がありました。

この4種は繊維の提供元によって2つに分けられます。動物繊維と植物繊維です。糸にするには各繊維で作業名や品名が違うのが厄介。紡績や紡ぐに統一してほしいところ。

絹(シルク)

次の写真は絹(シルク)です。

蛾の幼虫の殻(繭)を作っている繊維は蚕糸といいます。蚕糸から絹糸へ加工します。

蛾の幼虫の殻(繭)を作っている繊維は蚕糸といいます。蚕糸から絹糸へ加工します。

LoggaWigglerによるPixabayからの画像

加工段階は2種に分かれます。

繭から糸を直接引き出すと「生糸」といい、繭を一旦真綿にしてから紡ぎ出すと「紬糸」(つむぎいと)といいます。

羊毛(ウール)

次の写真は羊毛(ウール)です。

このフサフサした羊の毛をバリカンで刈り取ります。

このフサフサした羊の毛をバリカンで刈り取ります。刈り取った、いわば羊の脛毛や体毛を引き出す作業を紡ぐと言います

ramboldheinerによるPixabayからの画像

刈り取った、いわば羊の脛毛や体毛を引き出す作業を紡ぐと言います。次のコットンと同じです。

綿(コットン)

次の写真は綿(コットン)です。

また植物に一体化しているので厳密には棉花といいます。綿花でも間違いではありませんが。

この写真は綿(コットン)です。また植物に一体化しているので厳密には棉花といいます。

MariaaによるPixabayからの画像

棉花から落ちたボール(コットンボール)中に種子があります。

種子を含む白いと繊維を引き出すことを紡ぐと言います。長くしたいならクルクルと捩って(撚って)長くつなぎます。

綿は吸湿性に優れ、世界史上で最も使われてきた天然繊維です。

麻(リネン)

次の写真は麻(リネン)です。

天然繊維のなかで糸にするのが一番難しいのが苧麻(リネン)・亜麻(ラミー)・大麻(ヘンプ)の種類です。

Manfred RichterによるPixabayからの画像

天然繊維のなかで糸にするのが一番難しいのが苧麻(リネン)・亜麻(ラミー)・大麻(ヘンプ)の種類です。

表皮を細かく引き裂いて取りだした靭皮繊維をねじったりつないだりして糸を作ります。この作業は「積む」と言います。

絹や羊毛が高品質で高価だといわれても、汎用繊維の麻も高価なのは、積む作業が大変だからです。

麻は天然繊維でもっと強度が大きく、濡れると皺になるけど強度を増します。

化学繊維

おもに再生繊維と合成繊維の2種。

前者は痛んだ天然繊維の再利用繊維(レーヨン、キュプラなど)。後者は石油を原料とする繊維(ポリエステル、ポリウレタン、アクリル、ナイロンなど)。

上の写真は石油工場です。石油を高分子に合成し直して価額繊維を作ります。

PublicDomainPicturesによるPixabayからの画像

上の写真は石油工場です。石油を高分子に合成し直して価額繊維を作ります。

糸(撚る・積む)

繊維を糸に加工するにはいくつかの工程を経ていきます。

天然繊維4種とも、だいたい同じ工程を経ますが、以下の説明はとくに羊毛や棉花を念頭において話します。

おおむね大事な工程は二つ。

  1. 繊維から不純物を除去します(精練工程)
  2. 純粋繊維を撚って使いやすくします(粗紡工程)

精練工程:繊維から不純物を除去

自然環境で育った繊維は不純物を多く含んでいます。

たとえば羊の写真を思い出してください。空気中の誇りや土などが体毛に付着しています。また棉花の写真には虫がいることを確認できます。綺麗な糸にするには、これらの不純物を除去する訳です。

粗紡工程:純粋繊維を撚る

不純物を取り除いた純粋な繊維を捩ります(撚ります)。

いくつかのメリットがあります。

  • 短繊維2本以上を撚ることで、長い糸にできます。
  • 撚ることで、1本あたりの強度が増します。切れにくくなる訳です。
  • 撚ることで、糸がなめらかになります。引っ掛かりにくくなる訳です。
インターネットのインフラの一つ、光ファイバーも単純なケーブルではなく撚って強度を高めています。機会があれば覗いてみてください。
紡績機。それぞれのピンに糸が紡がれています。

紡績機。それぞれのピンに糸が紡がれています。

完成した糸

いくつかの工程を経た糸は次のように綺麗で真っ直ぐな形になります。

次の写真のように、少し凸凹している感じもありますが、これが撚り作業(撚糸作業)の結果です。

精練や撚りを終えて完成した糸。

精練や撚りを終えて完成した糸。 via Twisted yarn Cone 263 Lin Royal 800 m

布(織る・編む)

それでは、洗練された糸の使い道を考えてみましょう。

アパレル製品では、次のような糸の使い道が考えられます。

  1. 織物生地を作るための経糸(縦糸)と緯糸(横糸)
  2. 編物生地を作るための糸
  3. ミシン縫製をするための縫糸(多くは上糸と下糸)

織物の作り方

力織機。インドネシアのバンドンで。

力織機。インドネシアのバンドンで。Bandung, Indonesia, Photo by Lidya Nada on Unsplash

織物を作るには織機を使って経糸を設置します。
その経糸の上や下を緯糸が通っていって経緯の糸が重なっていきます。経緯の糸はそれぞれ浮沈しながら交錯しています。
基本の交錯は直角です(平織/平組織)。傍流に斜めに交錯するもの(斜文織=綾織/斜文組織)や直角交差でもドット風になるもの(朱子織/朱子組織)があります。これら3点を織物の3原組織といいます。

平組織のサンプル

平組織…経緯とも1本ごとに浮沈を繰り返し、固く堅牢な生地になります。

組織図は下のとおりです。

平組織の組織図です。

平組織の組織図

左図の左下4小間が完全組織(基本組織)になっています。右図は目で見た形です。

織組織の説明にはよく左図が使われます。

斜文組織のサンプル

3本以上の糸を上下に組み合わせ連続させて布面に斜めに走る筋を表現します。

生地の性質(地質)は少し柔らか悪なり、曲げやすくなります。皺ができにくいです。ただし、摩擦に弱い。

組織図は下のとおりです。

斜文組織の組織図

斜文組織の組織図

これは借問組織のうち「3枚綾」とよばれるもののサンプルです。戦前の織物業では三綾(みつあや)と呼ばれました。

経緯糸3本ずつで完全組織になります。

朱子組織のサンプル

平織や綾織りのようには規則的に連続しないのが朱子組織の特徴です。

経糸か緯糸だけが布面に多く現れます。表面は経糸か緯糸だけでできているかのように見えます。平滑で光沢が多くなるのが特徴。地質は柔らかいです。

3飛8枚朱子と5飛8枚朱子の組織図をサンプルにあげます。

3飛8枚朱子と5飛8枚朱子の組織図のサンプル。

3飛8枚朱子と5飛8枚朱子の組織図のサンプル

次の写真は私のリーバイ社製ジーンズ502です。

ジーンズ(デニム)はふつう綾織りで織られています。平織で頑丈すぎると動きにくいからでしょうか。

リーバイス502ジーンズとロゴです。

リーヴァイ・ストライスウス・アンド・シーオー(Levi Strauss & Co. Original Riveted)502TM。

編物の作り方

ここでは、編物の主体となる横編(緯編)だけを説明します。

織物もですが編物もキリがない…。それに織物以上に不勉強なので、どなたかご教示くださいませ。

編物の基本は、横方向に延伸した糸条にループをつくり、このループをもとにして第2段のループをつくります。横方向のループの連綴からヨコ編地ができます。

概念図は下のとおりです。

ヨコ編(横編)の概念図

ヨコ編(横編)の概念図

最初のループをとおり、第2段のループが前方に引き出されるときのループの状態を表目といいます。
反対側のループの状態は裏目といいます。

衣服・雑貨(裁って縫う=裁縫)

いよいよ衣服・雑貨です。

これまでたどってきた繊維⇒糸⇒布(織地・編地)となった布を「切って縫う」作業です。

難しくいえば裁断縫製、簡単には裁縫。

裁断機やミシンが開発される以前、手作業の時代には石やハサミで布を切って、手縫いをしていました。
19世紀になってミシンの開発は進みました。とくに19世紀中ごろのアメリカでは開発ラッシュが続いてミシン製造業が産業として確立しました。ミシン開発史の事情はこちらをご覧ください。

裁つ(裁断)

裁つことの基本は、想定した完成図に沿って布をズレずに切ることです。

そのために必要なのは、想定図にあたる「囲み製図」「型紙(裁断図・パターンとも)」「原型」などです。これらの特徴や違いはこちらをご参照ください。

次の写真は昔の背広(今の主に男性用スーツ)を仕立てるときの光景です。

MaatkareによるPixabayからの画像

上の写真は簡単に縫ってもいますから仮縫いの段階の風景ですね。

布に線を引いても良さそうなものですが、サイズや形を修正しにくいので、長らく人類は紙を使ってきました。

裁つことで次に大切になるのが切る物です。昔は石包丁、今はハサミや裁断機(カッティング・マシン)。

20世紀になって裁断機はミシン同様に進化しました。

フラットデジタルカッター(電子裁断機)

フラットデジタルカッター(電子裁断機)(JWEI CB08II) via List of Fabric Cutting Tools for Apparel Industry | Auto Garment

今は広い台に50枚ほどの布を重ねて、1ミリもズレずに垂直にレーザー光線、デジタル、ウォータージェットで切るということもできます。

種類の異なる生地を数十枚重ねてカットする機種もあるそうでビックリ。

縫う(縫製)

こうしてパーツごとに切られた布は「Cloth」から「Clothes」に変わります。

そして、各布パーツは手縫いとミシン縫いによって衣服・雑貨となっていきます。

以下では工業用ミシン・職業用ミシンと、家庭用ミシンに分けて説明します。

カフェで見つけたシンガー・ミシン。台北市九份にて2011年10月29日撮影。 Singer Sewing Machine in Taipei Jiufen at 2011.10.29

カフェで見つけたシンガー・ミシン。台北市九份にて2011年10月29日撮影。 Singer Sewing Machine in Taipei Jiufen at 2011.10.29

工業用ミシンと職業用ミシン

仕事用に服を作るには、必要なミシンは基本的に2台です。直線に縫うミシンと、縁をしっかり縫うミシンです。それぞれ本縫ミシンと環縫ミシンといいます。

私の妻のアトリエでは、2つの作業をブラザーの本縫ミシンとオーバーロックミシン(環縫ミシンの一種)で行なっています。

家庭用ミシン

このように工業用ミシンや職業用ミシンで最低2種類のミシンを用意すれば良いのですが、家で家庭用ミシンで服を作るには、1つの条件をクリアしていれば意外に1台でいけます。

服づくりの条件として1点いえるのはジグザグ縫い(千鳥縫いとも)ができるかどうか、これだけです。

家庭用ミシンは、工業用ミシンや職業用ミシンの専門特化と違い、1台でマルチな役割を担えます。本縫もできて、縁のジグザグ縫いもできて、おまけに刺繍もできます。

その分、過度な負担がかかりやすいので家庭用ミシンはよく故障するというデメリットもあります。

それは一旦おいておいて、ミシンは捨ててしまったけど久しぶりに服づくりをしたい方や、古い家庭用ミシンが押し入れにあるので久しぶりに使ってみようという方へ。

縁縫い(ジグザグ縫い)機能のついたジグザグミシンが家にあるか、新しく購入するか、確認・検討をお勧めいたします。

「縫う」のまとめ

さらに詳しい区分や工業用ミシンが意外にも家に置ける点(騒音が大問題でしょうが)の説明はこちらをご参照ください。

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