縫う楽しさをおくる!「服飾手帖」秋田ミシンの広告
この記事では「縫う楽しさをおくる!AKITA.S.M CO.,」と題されたミシン広告を紹介しています。
出典 「服飾手帖」上田安子発行人、服飾手帖社、1979年春号(同年4月発行)、通算327号、表紙裏
上田安子と「服飾手帖」の詳細はこちら。
広告主
この広告は、秋田ミシン株式会社(本部は大阪市東住吉区田辺西ノ町5-31)の宣伝です。同社はブラザー、シンガー、三菱、ジューキの販売代理店をしていました。
秋田ミシンの後継と思われるミシン店があります。
広告の概要
さて、広告のイラストを見ましょう。
シンガー社製ミシン、ブラザー社製ミシン、ジューキ社製ミシンの各1種を使って、女性のスーツを作ると図示しています。面白い発想です。
実際のところ、服の部分によって使うミシンが異なる場合があります。
このような現象は、19世紀末のアメリカでミシンが専門化していくなかで生じました。20世紀中ごろのミシン広告では男性用スーツに20代のミシンが使われているという趣旨のものも見られます。
アパレル工場は全部買いなさいという暗黙のプレッシャーがあったことは言うまでもありません。
広告の説明
図示されている3種のミシンを詳しく見ていきましょう。
念のため、3種だけでスーツを作れるわけではありません。本縫ミシンやロックミシンは前提で、むしろ広告イラストに示されていないと考えるべきです。
前提を超えた特殊性を表現した広告だとお考えください。
ジャケットの衿:シンガーミシン職業用ミシン
ジャケットの衿にはシンガー社の職業用ミシン「188u.103」タイプが挙げられています。
素晴らしい縫い目、ステッチも抜群!「服飾手帖」上田安子発行人、服飾手帖社、1979年春号(同年4月発行)、通算327号、表紙裏
衿は目立つため、縫目が端正になっている必要があります。
ボタン縫いつけ(穴かがり):ブラザーコンパルDX
ボタン縫い(穴縢)には当時話題だったブラザー社の「コンパルDX」電子ミシンが挙げられています。
コンパルはシリーズ名で、ブラザー社のホームページには次のように説明されています。
1975年から1985年にかけてコンパルシリーズとして数々のミシンが発売され、初心者にも扱いやすいミシンとして広く愛用されました。開発秘話 – ソーイングを変える、ミシン。COMPAL(コンパル)|家庭用ミシン|ブラザー
ボタン縫いつけは難しい作業です。
20世紀前半の日本ではアメリカ製のボタンつけミシンを輸入していた段階で、それも縫製工場が使っていました。ようやく1970年代半ばになって家庭用ミシンとして実用化された訳です。
紹介している広告には「コンパルDX」の機種番号が記されていませんが、上述のブラザー社のページには「ZZ3-B750」などが例に挙げられています。
このように「アルファベット2文字(ZZ)+数字」に、ハイフンを付けて「アルファベット1文字(B)+3桁の数字」を続けるというパターンだったと推測します。
フリーアーム
フリーアームが可能と記されています。
フリーアームができるということは、パンツの裾、帽子、靴などを縫えることを意味します。
ミシンのテーブル部分を取り外すと棒状(筒状)のベッドが出てきます。ここにパンツの裾、帽子、靴など円状になる部分の布を当てて縫うわけです。今では家庭用ミシンのほとんどがフリーアームです。
いろんな用途
穴かがり縫い(あなかがり)、伸縮縫、裁目縢縫い、纏縫などができます。
スカートの縁やパネル接続:ジューキ ベビーロック
このミシンは、ジューキ社が当時取り扱っていた「ベビーロック・ミシンEF205」です。
2016年にベビーロック部門が独立してベビーロック社になりました。
「縁かがりミシン」と記され、スカートの縁部分やパネル接続部分を縫うのに適しています。縁かがり(縁縢)ミシンは環縫ミシンの一種で単にロック・ミシンともいわれることもあります。
説明は以上です。
シンガー社、ブラザー社、ジューキ社、ベビーロック社のミシンをガチャガチャの模型にしたものが販売されています。
その一種を紹介した記事も併せてお読みください。
コメント 感想や質問をお寄せください♪